WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

設計-思うこと

3D CADは使いにくいと思う

Twitterでは日本の製造業のデジタル化が進んでいないという話題が定期的にあがってきます。 その話題を細かく見ていくと、3Dデータ vs 図面だったり3D図面 vs 図面だったり、そして3D CAD vs 2D CADだったりします。最後のはどちらもデジタルですが、最新ツ…

僕の設計は破壊され復活の時をただ待つ

始めて設計業務を振られた時、僕は何も分からず、ただただ我武者羅だった。 弊PJに若手がやってきた。CADの使い方は分かるものの、いわゆる量産設計は初めてというピカピカの若手だ。さて、どう仕事を振りソルジャーへと成長させるべきだろう。 初級設計者の…

3D図面は流行ってないし流行りにくいよなと思う理由

2022年のいち設計者として現在の3D図面に関する感想を書き残していきます。 まだ流行ってないのでは ものづくり白書 2020年に協力企業への設計指示方法の統計データがあります。第一章の第三節です。 これによると設計や協力企業への設計指示を3Dデータのみ…

人の図面をSNSで晒してはいけない

SNSで人の図面を晒す人がいる。 多くがネガティブな文脈で取り上げられており、そこに連なるコメントも図面を描いた人をくさすものだったりする。加工ミスなどの実害に怒っているのか、はたまた承認欲求の果ての行為なのかは分からないが、いずれにせよSNSで…

いち設計者から見た中国の工場 2022年ver.

アイリスオーヤマが一部製品の製造を中国から日本に移すことで2割ほどコスト減を見込んでいるとのニュースを目にしました。 プラスチック製品の収納用品なので大物かつ組立に工数が必要ないものが対象のようです。金型があれば、ほぼ人手がかからない製造群…

経年劣化でベタベタになった触感塗装からEOLの想像力を養う

触感塗装、ないしソフトフィール塗装ってありますよね。触ってみると肌触りの良い触感と心地よい温度感を提供してくれる塗装です。 あの塗装を施すと、5年内にはベタベタボロボロになって周囲を犠牲にしながらエンド・オブ・ライフ(EOL)を迎えることになるの…

CAEで未知な問題は発見できない、見たいものしか見れないから

※この記事で言うCAEは主に構造解析を指してます CAEツールの発展、計算機の性能向上。そんな技術の進化に押されて「物を作らないモノづくり!」が叫ばれるようになったのはいつからでしょう? 開発工程におけるモノを作る工程、モノを評価する工程、モノで対…

3D-CADを使わない設計は悪いのか?

先日、日本における3D-CAD普及率の話がTwitterに流れてきて、思うところあったのでブログにて吐き出したく。 元ネタを見るに3DデータのみはMBDやってることを意味するのかな。自動車業界以外は、海外も含めてまだこれからって印象がある。 https://t.co/ez5G…

メカエンジニアのキャリアの限界、もしくは閉塞感について

仕事には波があり忙しい日々を過ごしていても、ふと手を休められる節となるタイミングが巡ってくるものだ。 そうした時に頭をよぎるのがキャリアのこと。今後の身の振り方である。 いまの自分は手を動かす役割の中では上の方で、受け持っている業務内容も部…

えげつない図面を描いて、いつまでこの業務が存在するのかなと思った話

単品部品1個でA3 12枚に及ぶ大作図面を描きました。この記事を書いているいま、ひと仕事終えた余韻に浸っています。ちなみにまだ組立図や諸々の検査基準書などの紙仕事がまっています。うへぇ。 CADがオーバーフロー起こすほどの断面と寸法を入れる虚無をこ…

設計者CAEは銀の弾丸ではない

CAEという言葉をご存知でしょうか。Computer Aided Engineeringの略で、コンピュータを用いて仮想的に構造や熱などの評価・解析を行うことです。かつてCAEは限られた解析専門エンジニア部隊が行うものでした。 時代は進みCAEツールも進化し、設計者CAEという…

Pixel 4a 5Gの初期不良に思う、ユーザーサポートの在り方

Pixelの様子がおかしい 異変に気が付いたのは購入して次の朝。6時にセットしていた目覚ましアラームが鳴らなかった。端末の指紋センサーの反応もない。完全に電源が落ちていた。 充電してた電源アダプタ/ケーブルが非純正だったからか? 相性が悪いアプリが入…

小林化工の「普通は起こらない」ミスはどこでも普通に起きている

イトラコナゾール錠に睡眠薬が混入されていた件で、なぜなぜ分析した記事を拝見しました。 www.sankei.com 事故に至るまでに4つのミスが重なっており、「普通ではない」「ずさんだ」といった反応が多く見られました。 確かに小林化工の製造工程・品質管理は…

設計者はどこまで現場に踏み込むべきか

仕事の丸投げに関する記事を読んで ハードウェア設計も見方によっては丸投げ仕事です。設計者が作った3Dデータをベンダーに投げて、後はベンダー側で金型設計するなりプラスアルファの処理を入れるなりで、仕様書たる図面のスペックに沿ったモノが出来上がっ…

干渉よりも怖い!意図しない微小クリアランス

先日、干渉チェックに関するブログ記事を見て、「あーそういう干渉あるあるですよねー」と共感しました。 mechanical-engineer48.com 完成状態、動作前後、組込…干渉のリスクは至るところに潜んでいます。干渉は部品で組めば素人目でもすぐに分かるので、や…

CADを見過ぎて正気を失いそうな時は定規をじっと見つめるんだ

設計に襲いかかる後出しジャンケン 製品サイズ据え置きで大きなモジュールを突っ込まれる、逆にスペック据え置きでサイズ縮小を迫られる、またはその両方。こういった事件が100%近い確率で起こります。設計がある程度すすんだ段階で。とても、つらい。 こう…

Appleのマスク図面を見てデータムの在り方に悩む

Appleがマスク、もといフェイスシールドの作り方を公開しました。医療機関に提供したものを無償公開したものです。 support.apple.com 図面がDXFファイルで提供されているので、そのままシートカッターで加工が可能。シールド素材は推奨材ののみならず代替材…

リモートワーク下のメカ設計戦士たちが抱える、たった1つの苦悩

「リモートワークで設計は難しい」とブログに度々書いてきたわけですが、すっかりリモートワーカーになってしまいました。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。 メカ設計がリモートに向かない理由は、概ね下記2つの課題に集約されると思ってました。 リア…

Nespresso pixieを分解すると、なかなかヤンチャな設計だった

最近、ネスプレッソの水漏れが気になります。 カプセルの収まりが悪かったかなー、排水受け皿ずれてたかなー。そう思って真面目にチェックしてみたところ、どうも筐体の隙間から漏れ出てました。 内部劣化による水漏れが疑われます。素直に買い換える時期だ…

日本で設計を行う意義ってなんだろう?

防水設計。それがひと昔まえの、日本で設計を行う意義だった。 防水設計は単にパッキンや両面テープで止水する構造だけを指すわけではない。防水が担保できる各部品の公差の積み方、部品の管理の仕方、アセンブリ後の検査の方法。そういったもの全部を合わせ…

仕様作りに食い込めない設計部門は何をモチベーションとしていくべきか

今期、僕は目標として「自分だから作れる製品」の設計を掲げている。 設計部門のイチ担当レベルが製品作りに食い込むのは難しいだろう、目標をレビューしていたときに上司から真っ先に指摘された。コレについては異論は無い。製品の仕様決めは上流かつ上空で…

【CAD】スケッチはシンプルに描く、できれば完全拘束する

3D CADにおいて、スケッチは検討だけでなくモデリングにも使われます。3D CADのモデルは3Dですが、作る過程では2Dたるスケッチを弄っている時間のほうが多いのでは無いでしょうか。 そんな大切なスケッチですが、雑に描かれて放置されているものを時折見か…

失敗が許されない機種を設計する痛み

失敗に対する感度が極端に高い開発プロジェクト、が世の中にはあります。 B2Bで納品日がカッチリ決まっている物や、出せば必ず一定数売れる物など、色々ありますが共通しているのは確実に利益が出る、かつ利益がその利益が部署・会社の屋台骨を支えているっ…

設計者はCAEで解析する前に現物を見つめよう

「設計者もCAE使おうぜ」的な草の根活動が実を結び始めました。若い世代を中心に、CAEを試してみようと、僕の所に質問に来る設計者が増えてきました。喜ばしいことです。 ただ、相談を受けていてモヤッとすることがあります。相談される多くはツールの使い方…

iPhone 11 Proの背面ガラスの製造方法に思いを馳せる

発表されましたね、新しいiPhone。 特徴的な3眼カメラに、世間の話題を独占しているiPhone 11 Pro。あのカメラ部は衝撃ですね、僕もご多分に漏れずすごく気になってしまいました… カメラ部のガラスの作り! これ、一体で作ってますよね?製造的にもデザイン…

小型化は技術ではなく割り切りによってもたらされる

尖らせるって、こういうことなんですね。 SIGMA fpの尖り方が凄い www.sigma-photo.co.jp 描写優先で大きくて重いレンズを作ることに定評があるシグマ*1が超小型フルサイズミラーレス「SIGMA fp」を発表しました。カメラ本体から要素を排除し、アクセサリや…

ハードウェア開発サイクルにおける設計者のテンション推移

ハードウェア製品開発では、開発の進行に従って設計者の業務内容も変わっていきます。CADをクルクルし仕様を練る期間、モノを触っている期間、事務作業に追われる期間。楽しいフェーズもあれば苦しいフェーズもありますね。 移り変わる開発フェーズ、その位…

海外出張は若いうちに経験したかった

今年に入って海外の工場に出張する機会が増えています。 もともと、僕が転職した理由に「海外の工場を見たい」との思いがありました。今の状況は念願叶って、と言えます。 現場を見ることは勉強になります。製造に携わる人の性格や使っている設備を知ること…

設計流用は完全にパクリ切らなければいけない

次機種開発にアサインされた若手設計者が、僕の設計を参考にしてると言い、よくヒアリングに来てくれます。 参考にしてもらえるのは嬉しいものです。浮かれついでに、業務の隙を見て彼の設計データを覗いてみると、気になるところがいくつか。 材料の厚みが…

設計検討メモのベストプラクティスはエクセル・パワポ・紙の組み合わせ

設計を進めるとき、検討中のメモを残す設計者は多いです。 設計検討メモは下記の利点があり、単なる一時置きのメモではなく、それなりの可読性がある方が良いです。 ●設計検討メモの利点 検討状況の整理により、意思決定の補助になる 検討難易度と日程が明確…