WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

CADを見過ぎて正気を失いそうな時は定規をじっと見つめるんだ

設計に襲いかかる後出しジャンケン

製品サイズ据え置きで大きなモジュールを突っ込まれる、逆にスペック据え置きでサイズ縮小を迫られる、またはその両方。こういった事件が100%近い確率で起こります。設計がある程度すすんだ段階で。とても、つらい。

こういった無茶振りをされると「出来るわけがない!」と心で叫びながら、「こういう条件ならできますね」と遠回しにジャブを返すのもまた、設計職しぐさ。ただしジャブは大抵右ストレートでふっ飛ばされ、パンパンの臓物をライザップして無理やり突っ込める場所を作り出すのです。ポジティブに言うと、やりがいに満ち溢れています。

正気を奪う詰め込む設計

一瞬の薄肉なら大丈夫
板金は叩けば薄くなる
まだどこかに使えるスペースが、ほら隣とか...

本来協力すべき周辺部品の担当と陣取り合戦を繰り広げ、CADを拡大して存在しない空きスペースを探しているうちにジワジワと正気が削られていきます。公差計算して部品同士が触れ合わないギャップ関係にしてたはずが、「ガバガバじゃないか」。モノヅクリ的に必要な肉厚その他を「少しくらい無理できるでしょ」。

拡大されたCAD絵をみると本来は小さな1mmという寸法も、なんだか大きく感じてきます。そして自分自身も大きくなった気がして、どんどん大胆な、雑な方向に思考が偏ってきます。正気にて設計ならず。

1mmはいつも変わらない

そんなとき、ふとシンワの15cm直尺を眺めます。正気がまだ残っている時はステンレス。

ほとんど狂気に取り憑かれている時はシルバー。*1

何倍にも拡大された世界から現実のスケールへと戻ることで、かろうじて正気を保つことができるのです。1mmってやっぱり小さいし、こんなサイズが大きく感じるなんて、おかしい人の考えることです。

仕事も変わらない

取り戻した正気をもって現状を整理すると、やがて自分の置かれている状況は何1つ改善してないことにも気が付きます。1mmは小さいけど、だからといって仕様は変わらないし納期も動かないよね。結局、1mmを小さいと思う正気の精神でガンガン攻めた設計をしていかないといけないし、その責任も飲み込んでいかねばならんのです。

状況こそ違えど勤め人なんて大体そんなもんだし、本当にやばかったらDRなり試作で引っかかるじゃん、って思うことにして、どんどん変な構造を生み出していく所存。問題が起きたら、それは設計ではなくプロセスがおかしいんだ。

*1:材質は一緒なんだって。騙された気分だ。