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ハードウェア開発サイクルにおける設計者のテンション推移

ハードウェア製品開発では、開発の進行に従って設計者の業務内容も変わっていきます。CADをクルクルし仕様を練る期間、モノを触っている期間、事務作業に追われる期間。楽しいフェーズもあれば苦しいフェーズもありますね。

移り変わる開発フェーズ、その位置により日々のメンタル・テンションが大きく変わるのは僕だけでしょうか?自分の周りの設計者と話している限り、みな大体同じタイミングでテンションが上がるし、同じタイミングでギスギスします。傾向性があるような気がしてなりません。

開発サイクルの中で自分のテンションがどう上下するのか、それぞれのフェーズの面白み・ツラみをお話しします。

設計者が関わる開発フェーズ

設計者の立場で主に関わる開発フェーズは下記です。

  • 仕様がふわふわしている段階の構想設計
  • 目指すものが見えてから作り込みに入る詳細設計
  • DVT(Design Verification Test:設計検証試験)が始まる試作初期
  • 販売に向けて製造・性能への追い込みがかかる試作後期
  • 終わりと始まり…量産、そして発売

ある程度の企画が決まりつつも実体がない状態からジョインし、仕様と現実の間を彷徨してフラフラしながら形にしていき、実際にものを作って(試作)、実機でガンガン試験して作り込み、販売までこぎつける。設計という職種がカバーしている範囲は、こんなものでしょう。

開発フェーズと僕のテンションの具合をグラフにすると、下記のようになります。

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詳細設計、量産への追い込みが本当にキツイんですよね…。詳細に移ります。

仕様がふわふわしている段階の構想設計

最初は構想設計です。
「こういうターゲットに向けて、こんな商品を作る」という、企画屋さんの熱い(かつ夢見がちな)仕様を胸に、メカ屋が中身たるデバイスでパズルするフェーズです。

この時期は楽しいですね。最終形がどんな物になるか、自分が深く関わっているフェーズで、自由度もあります。そして何より、時間に余裕がある。これが大きいです。精神の安定という点で、時間の余裕ほど大切なものはありません。

チャレンジングだったり新規ラインの企画だと、このフェーズで複数仕様を並列検討したりしてグダったりします。グダっても、日程があれば大丈夫です。日程があれば。。。

目指すものが見えてから作り込みに入る詳細設計

方針が固まってくると詳細設計に入ります。
具体的な構造が出来、DR(Design Review)で揉まれる機会が増えてきます。設計的リスクが明確になってくる中で、その解決策を模索する日々。

金型を彫り始めると、もう戻れない。問題をカミングアウトするなら今のうち。そんな内なる声と戦いつつ、きたる金型起工データ提出の締切をにらみつけながらの業務に、テンションは下がっていきます。

DVT(Design Verification Test:設計検証試験)が始まる試作初期

待ちに待った試作機の完成!ここから評価を経て、世に出して恥ずかしくない子かどうか判断されます。

やっぱり自分で絵を描いたものが形になって、実際に動くと嬉しいものです。触って、使って、テンションは最高潮。もう販売で良いんじゃないか、という気分にすらなります。ここがピークです。楽しいことはおわり、あとは長く辛い作り込みのフェーズです。

販売に向けて製造・性能への追い込みがかかる試作後期

評価→修正を繰り返すごとに問題は減っていきます。そして、難易度が高くどうしようもない問題だけが残ります。迫りくる出荷の日と日々減っていく対策のオプション。1日ごとに追い込まれていくのです。

10年弱開発をやってきて、量産間際で大きな問題が残っていない機種は1機種だけですね。ほかの多くの機種はたいていどうしようもない問題を抱えていて、量産に向けてずっとワタワタしていました。ナイーブになります。テンションもだだ下がりです。時折、チーム全員が正気を失い、狂ったソリューションが生み出されます。

終わりと始まり…量産、そして発売

嵐を乗り越え量産が始まり、製品が世に送り出されます。期待と不安が入り交じります。

外で使われているのを見るとテンションが上がる一方、問題が置きていないか心配になる。世間の評価が気になる。そんな、落ち着かないフェーズです。ただ、このフェーズまで来て落ち着いている場合は、すぐに次のプロジェクトにアサインされちゃいますね。どこも、人手不足です。

まとめ

産みの苦しみといいますか、後戻りできないポイントに対して内容を詰めていく段階で激しい苦痛が伴うんですよね。締切があるのは辛いものです。

ただ、締切があるからこそ人は必至になれる側面もあります。締切があるからこそ、世の中に出せる製品が作れるのかな、とも思います。

何にせよ、製品開発のしごとは喜怒哀楽、多くの感情を体験できて暇はしないですね。業界の変化も激しいですし。刺激的な人生を送りたい人にピッタリの職業ではないでしょうか。

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