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機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

構造設計者が不具合解析するときの手法の一例

新しいものを開発していると試作や、運悪い時は量産段階で不具合が見つかります。

不具合の原因を突き止め対策を打つまでの早さは業務進捗に大きく影響するものの、方法は個々人のノウハウとなっており若手への継承がなかなか難しいところです。

一例までに、今回は自分が不具合解析する時の手順を文字に起こしていきます。

発散した思考で仮説を量産する

不具合の発生連絡を受けた時、まずは不具合に繋がりそうなモードを自由な発想で考え仮説を作ります。どの部品・どの工程で問題があれば不具合につながるよな~、と。

仮説の数は多くて困ることはないので、なるべく多く持つようにしておくと良いです。

不具合の傾向性と再現性を確かめる

ここからは量産した仮説から有力なものを絞り込んでいきます。

不具合について、特殊な傾向性が無いかを確認していきます。この作業だけで原因を突き止めるというより白とグレーを切り分ける目的で行います。

  • 特定ロットに集中していないか→作業員のミス、環境起因疑い
  • 設計変更した周辺での問題なのか→設計変更の副作用疑い
  • 特定のCav番に集中しているか→一部Cavの製造不良疑い
  • 再組立で再現するか→部品問題と組立問題の切り分け

不具合に関連する部品を観察する

不具合品を入手できたら不具合が生じている箇所の周辺を観察していきます。

ここで重要なのは変化点を見つけること。

変化点とは正常なものとの違いだったり、設計データとの違いだったり、過去に試作を行っていれば過去との差分でもいいです。何か変な形状がついていたり、部品があるべき箇所からズレていたり、寸法が公差外になっていたり、拡大鏡で見るなりノギスで寸法を確認します。

また前工程で仮説も有力なものが絞られてきているので、自分の仮説に沿って疑わしいところを重点的に確認しましょう。

特に変化が見当たらず再現性のある問題ですと、設計の想定が間違っている場合があるので、その時は設計を見直すようにしてみましょう。

変化点を確認する

部品以外にも作業に変化点がある場合もあります。いまいまだとCOVID-19の影響で現場への出張が厳しい昨今では情報入手も難しいのですが、現場での変化点もおさえておきましょう。

  • 作業工程→直近でなくなった作業・追加になった作業はないか
  • 作業環境→治具や設備での変化はないか

不具合を再現させ、対策で改善することを確認する

上記の手順を踏んで解析していると、あらかた不具合のメカニズムも見えてきていると思います。

メカニズムが見えていると対策も自ずと決まります。大切なのは対策の妥当性を現物で確認することです。

メカニズムをもとに不具合を再現させたものに対し、対策を施し改善するかをきちんと確認します。下記のように、対策にロバスト性があることを証明できるような検証ができるとベストです。

  • 多台数で検証する
  • 極端な不具合モードで検証する(公差ワースト+αなど)

実際に物を作ることが難しい場合はCAEを頼る場合もあります。何れにせよ、対策の効果確認は行うようにしましょう。思い込みで設計変更をしないように。

やってはいけないNG対応

  • 原因不明だけど効きそうだからやってみる
  • 起きている現象を無視する

自分も若い頃にやって怒られてきたわけですが、起こっている現象を正しく理解せず設計変更した場合、もともとの異常が正常に戻ったときに設計変更が悪さをすることになり得ます。もともとの設計を曲げることで副作用もあるでしょう。

そうしないためにも原因を見つけ、理にかなった対策を行い、きちんと検証した上で実施する。この流れで不具合を解決していくことが肝要です。

まとめ

自分が不具合解析するときの手順を文字に起こしてみました。

開発をやっていると仮説どおりにいかない場面にも多々出くわします。追い詰められたように感じるものです。ただ物理的な不具合は、物理的な現象を見つめて、物理的に妥当な策を当てはめていくことでのみ解決できます。本当にしんどいのですが、愚直かつ着実に不具合の仮説を潰して解決まで歩んでいくしかないんですよね。日程やらコスト面やら、物理以外の物事も開発にはついて回りますが、そのあたりは御上を積極的に頼れば良いかなと思います。(頼れない場合もありますが。)