次機種開発にアサインされた若手設計者が、僕の設計を参考にしてると言い、よくヒアリングに来てくれます。
参考にしてもらえるのは嬉しいものです。浮かれついでに、業務の隙を見て彼の設計データを覗いてみると、気になるところがいくつか。
材料の厚みが変わっていたり、締結のスパンが変わっていたり。
危なそうだな、と思ったのでCAEで荷重をかけてみると案の定、変位量が危険水域に…。
オリジナル色を出すには元ネタへの理解が必要
昔、上司が「形にはすべて何かしら意味がある」と、よく言っていました。設計職を続けるうちに、その意味が自分にも馴染んできた今日このごろです。
もしあなたが単純な箱を設計するとして、CADで適当な四角を描くでしょうか?恐らくは、収納したい物の寸法を測定して、箱のサイズを決めていくはずです。形に意味があるというのは、そういうことです。
これは仕様に限った話ではなく、製造都合だったり、社内評価基準を満たすための対策だったり、色々な意味が形状には隠れているものです。
そうした形、構造に込められた本来の意味を理解せず雰囲気を似せていくのは危険です。
元ネタを理解するために
どこを変えられて、どこを維持するべきか。設計経験を積んでいけば、形状から勘所がわかるものもあります。それでもやはり、全てを理解することは難しいです。結局一番いいのが、もとの設計者にヒアリング、直接聞くことです。
ヒアリングする人が異動や転職でいなくなっていたとしたら、同じプロジェクトの人だったりベンダーの人だったり、関連する人にヒアリング対象を広げるしか無いですね。
設計検討の資料がまとめられ、公開されていれば良いのですが、開発中に大きな問題になっていないものは、社内にノウハウ化されていることは稀です。細かい設計の配慮、勘所をどうやって言語化し、広く共有していくか。これはいつでも、どこでも課題として存在します。
完全コピーが一番安心
元ネタを完全に理解できない。そんなときの最善手は完全コピーです。
部品ごと完全に流用し、周囲の形状も全く同じようにできれば文句なしです。あとは図面の寸法の振り方と実物の出来上がりに注意すれば、問題が起きる可能性を最大限潰せます。
こうした完全コピーは誰でも出来るし、新規要素を減らすというのは開発という職を否定することにもなりかねないです。
それでも完全コピーと言う手段は有効だし、どんどんやっていくべきだとも思います。
物の価値がハードからソフト・サービスといった無形のものに移行して久しいです。ちょっとした形状変更に多大な費用と工数を割くよりは、ハードで提供できる価値がどこにあるかを時間をかけて考え、検証していくべきかと思います。
昔の上司から「何も理解していないのに形状だけ真似るとは嘆かわしい」と激詰めされそうですが。
話が結構それちゃいましたね。とにかく、よくわからないものは完全に真似しきる。それが一番です。
こんな記事も描いています。