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工場研修が有意義になるマインドセット

ハードウェア製品を作っている会社に入ると、工場研修というものが職種を問わず行われるかと思います。

ハードウェアエンジニア以外の人にとって、工場の研修に意義を見出しにくい、というのは理解できます。実際の業務と直結していない現場で、研修内容も単純作業が多いでしょうしね。

今日は、そんな工場研修がちょっとでも有意義になるような心構え、視点というのをお話したいと思います。(※ここで言う工場は製品を組み立てる工場を想定しています。)

工場は効率的である

工場は時間当たりの生産性が利益に直結します。よって、他のどんな職場よりも効率を重視しています。作業は0.1sレベルで分解され、自分たちの保有するリソースで最も短時間に、高い歩留まりで生産できるかを考え抜いた結果がラインに表れています。

そんなラインを見たり、時にはラインの一部になるのが工場研修ですね。効率を重視する工場では、モノやラインの配置にいちいち理由があります。それらの理由を考えたり、自分の中でより効率的な工程を考える(そして提案してみる)、ということを意識してみると、学ぶところが多いかと思います。

この説明だけだと抽象的ですね。工場を見る視点の具体的な例を混ぜてお話してみましょう。

なぜ人はロボットに置き換わってないか

効率化といえばロボットです。AIというワードが最近の流行りですが、認識機能を持つものから単純にプログラムされた動きをするだけのものまで、工場では様々なロボットが存在します。

にもかかわらず、作業の主役は今でも人間です。業界によっては自動化が進んでいるところもあるかと思いますが、完全オートで物を造っている工場を、僕はまだ知りません。

ロボットというのは融通が利かないものです。ネジを打つロボットは画像認識出来ませんし、ラベルの傾きを検出するロボットは部品を組み込むことはできません。移動させるのも、大変な苦労を伴います。

反対に、人間はどんな人であれ、教えられればネジを打てますしラベルの傾きを検出し、部品を組み込むことが出来ます。そして、ロボットと違って移動も簡単だし、身体のメンテナンスも自分たちで行えます。

専門にやらせるならロボットが有利な場面もありますが、教示や場所の制約を考えると人間の方が経済的に合理な場面って多々あるんですよね。

ちょっと前にキヤノンが工場の自動化を推進すると言ってましたが、あれは工場の変革以上に、「ロボットでも組み立てられる設計にする」という意味で、設計者が主役の案件じゃないかな、と思います。

どういった作業が自動化に向いてるのか、どのようなシステムがあれば人の利便性を超えられる効率性がロボットに備わるのか。または自動化するためにあるべき設計ってどんなものなのか。工場でラインを見渡しながら、そういったものを考えてみるのも面白いですよね。

「競合が出来ていること」ができないのは?

最近はネットで調べれば結構な製品の分解写真が見られます。分解マニュアルが多く投稿されているiFixitは、僕も仕事の参考によくアクセスしてます。

競合他社の製品の構造を理解したうえで、工場で組み立てているものを眺めてみると、他社で出来ていて自社で出来ていないこと、もしくは、その反対のものを多く見つけることが出来ます。

組立・分解の観点でどちらが優秀なのか。もしくは同一の機能で空間占有率が違うのはなぜか。

違いの原因を実際の物を手に取り組み立て、眺めて考えてみる。製造技術の人に聞いてみるなど、違いの深堀をしていくと、どうでしょうか。

特許的な理由で真似できない優れた構造があったり、リペア性を重視する故の構造だったり。会社による戦略の違いみたいなものが見えてきます。ひいては、それが積もり積もって競争力の差になっている、ということに気付きを得るかもしれませんね。

まとめ、せっかく時間を使うのだから、何か得るものを

「せっかく時間を使うのだから、何か得るものを」、と考えてみてはいかがでしょうか?

工場って田舎の方にあるから研修後の楽しみも少ないし、ラインの人たちは違った価値観の人が多くて話が(時には言語も)合わないことも多くて、なんだかいやだなーと思ってしまうかもしれません。単純作業は時間が過ぎるの遅くてシンドイってのもありますね。ただ、慣れてみるとそういう環境って、意外と考え事に向いてるんですよね。

製品に貢献する業務に携わるなら、「どのように製品がつくられているか」を知っておくことは役に立ちます。それが開発ではない研究であれ、調達であれ。だから、研修では1つでも多くのことを学んでもらえたらな、って思います。

しっかし僕も、アサインされるプロジェクトがポシャってばかりで工場に全然いけてないなぁ…。

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