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図面更新・検索に工数が吸われてつらいので、設計サイドが図面管理システムに求めるものを書き連ねる

部品の数だけ図面は有ります。

図面は、単に部品の合否を判断する文書であるだけでなく、後の設計の参考になったり、流用可否の判断材料になったりします。

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なので、その図面を管理するシステムには色々と要求が湧いてくるわけですが、今のところ納得のいくシステムには出会えていません。たぶん設計サイドの意見が全くシステム仕様に響いてないんだろうなと思ってます。今まで、システムに関するアンケートを受けたことも、受けたという話を聞いたことも無いですしね。

図面の管理は設計のみならず、工場や購買部門、それにベンダーにも関連します。そちらの方が使用頻度や影響工数の面で声が大きいのかもしれません。

が、不満を溜め込んだままにすると体に毒なので、設計サイドが図面管理システムに求めていることを書き連ねていきます。

図面管理システムに求めるもの

大きくまとめると3つです。

  • 検索性
  • 柔軟性
  • 更新性

検索性

自分に知見が薄い部位もしくはプロジェクトにアサインされたときに、最も参考になるのが過去の類似機種図面です。

どこで位置を決めているのか?どの寸法が重要か?何を気にして設計すればいいか?

図面を見ればこのあたりのことが、ざっくり理解できます。だから、過去の図面を素早く、正確に集めるための検索性は何よりも重要なものと、僕は考えています。

検索性が高いシステムとはどうあるべきでしょうか。

最低限、システム内だけで検索が完結していることが大前提でしょう。別途、BOM(Bills of materials/部品表)を開いて図番や部品名を調べる必要があるのはナンセンスです。

図番や正確な部品名が分からずとも、プロジェクト名や部位のキーワードから目当ての部品が検索できる。また逆に、図番や部品名から、その部品を使用するすべてのプロジェクトを検索出来て欲しいですね。

前者は、欲を言えば概念検索みたいなのが出来て、例えば同じ機能を持つ部品を機種をまたいで検索、比較できるようになるとグッドです。設計する時は、いくつかの構造を比較検討していきますからね。

後者は、設計というよりも製造キャパを考える参考になります。同じ部品を流用しようとしても多くの現行モデルで使用されてて既に製造キャパがいっぱい、増面型が必要になることもあります。また、現行モデルで使われているからこそ工場側に在庫があり、新規開発の試作機にも即座に追加できる、という検討が出来たりもします。

また重要なのは、検索できることではなく、少ないクリック数で検索できることです。色んな情報が引掛り過ぎて、深い階層まで潜らないと目当ての図面にたどり着けないなら、それもまたナンセンスなのです。

柔軟性

部品の数だけ図面はある、と上で述べました。では、同じ金型で作り違う塗装が施された部品は別部品でしょうか?印刷の違いは?入れ子交換で、複数のインターフェースパターンに対応するような金型構造にしているものは?

これを別部品に分けるかどうかは、図面の運用システムの設計で決まってきます。

全てを別部品として処理すれば混乱はないかもしれません。ただし図面の作成・登録工数が増え、現場の負担が増えることは必至です。それを避けるには、図面に柔軟性を持たせる必要があります。

柔軟性、例えば色だけの違いなら、図面内にカラーバリエーションを網羅した表を挿入する、とかですね。図番も、その表に対応できるような柔軟性があるようシステムを設計しておく必要があります。

図面の柔軟性は、通信に関わる部品を設計する上で重要です。国や仕様(Sim/wifiのみとか)により受信アンテナやモジュールが違ってくるのですが、それらの違いを、前述のように金型の1部を入れ子交換で吸収する、という対応はよく見られることです。一部だけ形状が違うが、他は全て同じ形状の部品が複数できるわけです。その部品を、全て1から寸法を振りなおさせるのか、一部の違うところだけ寸法を振らせるのか。

寸法が数百個振ってある図面を想像してください。この図面を量産するか否かは、工数の痛く響いてきます。

更新性

図面は出図(金型を掘るためのデータを出すこと)のデータを元に製図され、システムに登録されます。そして、試作を経て形状の修正が入ると、更新されます。

こうした登録・更新作業の円滑性こそ、更新性と僕が呼ぶものです。

図面は出図時の3Dデータと違っていると事故が起きるので、CADのVer管理と連携して更新ロックかけるシステムがあったりもします。そうなるとシステムの規模が大きくなるのか、ユーザー側(設計サイド)の手順が煩雑になったりもします。手順の煩雑さや工数のかかり具合から、別の事務スタッフが必要になったり。。

また、データをロックされると、そこから先の検討をどうしていくかといった問題もあります。別名コピーで形状データを複製すれば、変更の検討は出来ますが、いざ変更を実際に適用しようとすると元データに同じようなCAD操作が必要になるなど、ムダが生じます。

何事もシステマチックに行うことでカッチリとミスを防止するのは大切なことです。ただ、作業の複雑さは増していくので、見切りをつけて人の自律に任せる判断も、時に必要なのかと思います。

まとめ

図面管理システムについて、思うところを書いていきました。

実際に図面管理システムを使っている人じゃないと、何を言ってるのか全然分からないかと思います。ただ、設計やってると滅茶苦茶お世話になるんですよね。使用頻度が高いシステムは、やはり気に入れないところが目について、何とかして欲しいと思ってしまうわけです。

上に挙げた求めるものについて自分の中での重要性を振ってみると、検索性:柔軟性:更新性=6:3:1くらいですね。検索が何より早く行えること!目当ての図面がすぐに揃えられること!これが僕にとって、何よりも重要なことです。

ローカルフォルダに保存した図面を見に行くより、紙で印刷した図面を開くよりも、システム経由で素早く図面にアクセスできること。それが可能なシステムこそ理想です。

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