「設計者もCAE使おうぜ」的な草の根活動が実を結び始めました。若い世代を中心に、CAEを試してみようと、僕の所に質問に来る設計者が増えてきました。喜ばしいことです。
ただ、相談を受けていてモヤッとすることがあります。相談される多くはツールの使い方についてですが、境界条件(固定、荷重の条件)がアバウトなものが多いのです。使っている人ならわかると思いますが、CAEって境界条件次第で全然違う挙動をするんですよね。
適当な条件付けで結果が振るわず、「CAEは所詮現実じゃないから…」となるのが、何よりも怖いです。
CAEの落とし穴
CAEの利用場面として良くあるのが、試作の問題を受けての対策検討です。強度試験でポッキリいってしまった場合の、強化対策の効果確認とかですね。対策前後の形状で同一の境界条件を施し、相対的な改善を見ます。それに加え、現物で手加工した物で評価したり、解析結果から想定される改善分、負荷を減らした評価を行って、ポッキリいかなくなれば、対策の効果アリと判断はできそうです。
しかしここで落とし穴。ポッキリいく要因を正しく理解できているか?ここがきちんとしていないと、CAEの解析結果も、対策も、全て無意味なものになります。
現物をきちんと観よう
大切なのは破壊までのメカニズムです。試作機に負荷が与えられた時に、内部ではどのような動きが起こっているのか。
それを推測するには、現物を観るしかありません。打痕など、周囲からの外力を受けた形跡が無いか。どこがぶつかって力が集中しているのか。特に、破壊が複数箇所に及ぶ場合、最初の1つの破壊があったために他の箇所への負荷が増加し、破壊へと至るケースもあり、どこが最初に壊れたかを適切に検証する必要があります。
この観察結果によっては、CAEで荷重を与えるべきポイントが変わる可能性もあり、もちろん結果も変わってきます。3Dモデルと強度試験の条件をすべて反映して解析すれば確実ですが、そんな事やっていると工数いくらあっても足りませんから、現物でメカニズムを把握し、最小の構成でトレースする解析を行うのが大事です。
現物の動きを観よう
固定条件についても注意が必要です。
リブ支えているから3軸固定!と思ったら、現物は回転方向で変位が発生…なんて事象もあります。
CAEでの挙動と、現物での挙動。2つが合致して初めて、CAEによる設計検討が実を結ぶわけです。そのためにもやっぱり、しっかり現物を観る必要があるんですね。
まとめ
CAEでの対策検討は、現物をきちんと観たうえで行うことが大事。
ツールが進化してCAEで結果を出すまでがすごく簡単になってまして、それ自体は大変ウェルカムです。ただ、それでも、きちんと考えて設定しないといけない所があるのも事実。
また、現物すべてが3Dデータ通りできているわけでもありません。ここも含めて、CAEを行うからこそ注意深く現物を見る必要があるわけです。