CAEの計算結果が他の人と違う傾向を示す。と、先日相談を受けました。
あるある系の相談でして、原因でよく見かけるのが、ネジ固定部の条件付けの違いです。ネジ固定の考え方の違いは、部品の変異や衝撃時の挙動に大きく影響します。
ネジで部品が固定されるメカニズム
そもそもネジで部品が固定される理屈はなんでしょう?
ネジはドライバーで締められることで弾性的な伸びを示します。伸びから元に戻ろうとする復元力、いわゆる軸力が発生し、それが被締結材に圧縮力を発生させます。この圧縮力が座面の摩擦係数と合わさることで、ネジにより部品が固定されるのです。
被締結材が完全固定される、という幻想
CAEで計算する際に、軸力と摩擦係数を入力すれば、現実に近い結果が計算できるでしょう。ただ、それは計算負荷がかかるし設定の時間もかかる、何より正確な軸力と摩擦係数を見積もるのは困難です。
というわけで、擬似的な固定の出番です。
自分がよくやるのは、内径と雌ねじ部を結合させる方法です。単品だけで解析する場合は、内径をゼロ変位で拘束します。座面を利用しないのは、座面のフィーチャーを別途押し出してやらないと広範囲がゼロ変位になってしまい、過剰な拘束となるからです。実物より良い結果になると、リスクが抽出できないですしね。
しかし、この固定方法でも、実物よりも強い固定なのです。
ゆっくり荷重がかかる、小さな荷重がかかる。そんなシチュエーションだと問題ありませんが、落下衝撃を視る場合、特に非締結材が重量物だと挙動が変わってきます。強い衝撃だと、現実はネジ締結部もネジ穴とネジ径のクリアランス分は動き得るからです。
被締結材が動く前提の条件
被締結材が動くかも。そういう想定の時は、下図の条件を入れます。ネジと雌ねじ材は結合で、ネジと被締結材は接触だけにしておく設定です。
こうすれば被締結材はネジ穴とネジのクリアランス分だけ動き、衝撃を想定した計算は実際の動きに近づきます。
この固定条件の問題は、計算上ネジの軸力が入力されてないので、被締結材は現実よりも動き安いです。実物よりも派手に動いているように思われる場合は、クリアランスを変えてみたりなど、工夫が必要になってきます。
何を見たいか、どう動くのかを想定して条件を決める
固定部について、全てを満足するような完璧な条件って無いんですよね。大切なのは、実際の動きがどうなっているかを実物で観察すること、もしくは想像することです。今回は被締結剤の動きに注目した内容ですが、例えばネジの頭が飛ばないか見たい場合はどうすればいいか?雌ねじと被締結材の内径を結合してると、見れないですよね。
とまぁ、CAEは条件一つで挙動や数値が変わっていくものです。なので、現実に合わせ込みにいくのは大変で、膨大な経験とデータが必要になります。専属ならともかく、本業・設計者がDeepなとこまで踏み込むのは危険なので、相対的な比較を行うのにCAEを使う程度にしておくのが良い付き合い方かなと思います。
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