Appleがマスク、もといフェイスシールドの作り方を公開しました。医療機関に提供したものを無償公開したものです。
図面がDXFファイルで提供されているので、そのままシートカッターで加工が可能。シールド素材は推奨材ののみならず代替材に触れており、シートの製造方法の各種プロコン説明に、検査ポイント含む製造全行程の紹介、と非常に丁寧です。素晴らしいですね。
で、図面が公開されていると、どんな図面か気になりますよね。早速見てみました。
Face shield drawing
バリのサイズのみならず方向も指定してあって、丁寧ですね。PETの抜きものなので、上も下も無いようなものですが、きっちり指定しているのは会社柄を感じます。
しかし、気になるところもあります。データム・・・基準のとり方です。
縦横のデータムとも、□に囲まれた寸法から作られています。この寸法は理論的に正確な寸法を意味します。
理論的に正確な寸法
実際のモノは図面に書かれた寸法から、いくらかのばらつきを持って出来上がります。完全に図面どおりの寸法じゃないと駄目!ってしちゃうと、モノが取れなくなっちゃいます。なので、図面の寸法は、いくらかの許容値…公差が規定されています。この図面だと、右下に記載がありますね。±0.25までオッケーです。
で、理論的に正確な寸法とは。モノの出来上がりがどうであれ、絶対に正確な寸法です。なんやねん、って感じですね。
この図面だと、製品の一番外の部分から、198.75の箇所に仮想的な線があると見なし、そこをデータムBとして規定すると読みます。マスクが図面通り397.5でも、大きめにできて397.75でも小さめに397.25でも、とにかく外形から198.75の箇所がデータムBであり基準になるわけです。
データムが2つ?
ここで僕が疑問に思ったのは、データムBを定義する理論的に正確な寸法が2つあることです。2つの寸法は、設計値センターでできたときは一致しますが、少しでも違うとそれぞれ異なる線になります。その場合はどちらを優先するのか?この図面を見て、気になった次第です。
なんとなく図面で謳いたいことは分かります、察せます。たぶん最外形の真ん中をデータムにするって言いたいんだと思います。
その時に、この記載で良いのか。ちょっと僕には判断できないです。
以前読んだ本に、円筒の中心や中心平面にデータムを置く際には、寸法線にデータムを重ねて記載するとありました。
- 作者:山田 学
- 発売日: 2017/01/14
- メディア: 単行本
その教えに倣うと、こんな感じでしょうか。
ただしこの記載がシート部品の中心線として使えるのかもちょっと自信がなく。どういう振り方が正しく、また製造者に伝わりやすいんでしょう?データムって難しいです。
まとめ
データムはよくわからないし、何なら図面もゼンゼンワカラナイ。俺は雰囲気で図面を書いているんだ。そんな気分になってしまう今日このごろです。
僕の知識の範囲ではAppleの記載は正しいと思えない一方、Appleほどの企業の図面なので、実のところはこの書き方が一般的だったりするのでしょうか。ゼンゼンワカラナイ。
中心に基準を持ってこようとすると、データムよくわからない現象に陥ってしまうので、僕は実業務において中心振りで図面を書きません。対称形状だろうと、外形でしっかり形状があるところにデータムを規定します。これなら間違いなし。測定するときも、データムを治具にがっちり付き当てればオッケー。限りなくシンプルだ。そこから追った寸法が果たして設計的に欲しい寸法なのか怪しいが、これが僕なりのThink simpleだ!
- 作者:ケン・シーガル
- 発売日: 2012/05/23
- メディア: ハードカバー
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