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「ねじは3山以上かけろ」の謎

ねじ

僕はこれまでいくつかの分野を超えて電子機器の設計に携わってきました。作るものが変わるたびに異なる文化圏に来たような衝撃を受けてきたものです。

使う材料や製造方法、公差の考え方、品質への取り組みなどそれぞれ独特な中にあって、何故か共通して語られる指標があります。

それが、「ねじは3山以上かけろ」というものです。

設計するものによって、M1.2~M2.5のレンジでねじを取り扱ってきました。被締結材(めねじ)の材料は違うし、ナイロックやスコッチグリップなど緩み防止材を使用することもありました。ネジのかかり量に対する考え方もそれぞれです。(不完全ネジ部を除外して考えたり、公差ワースト前提で考えたり…etc)

それでも不思議と、3山かかっているか否かが設計の可否を分けるラインとして、よく取り沙汰されているんですよね。

先輩社員に3山の根拠を尋ねたこともありますが、往々にして「これまでの実績」の一言で返されてしまい、自分の中で腑に落ち切らないまま「ネジは3山以上かけよう」と考えて設計をしてきました。

ただ僕もそろそろ中堅で、下の人に3山の根拠を尋ねられた時に明確に答えられるようにしておきたいです。そんなわけで、この記事を書いています。
記事を公開しておけばインターネットの集合知が何等か納得のいく答えを出してくれるのではないか。知ってることをアウトプットするのは大切な一方、世の中は僕の知らないことだらけで、知らないことをアピールして教えてもらうというのも、1つのネットの使い方なのかなと思います。

ちなみにGoogleで「ねじ 3山」で検索すると、貫通後に3山とび出させる、という話がヒットします。

ねじ3山

この件については、製造面と力学面で明確な回答が存在しました。
製造面では、不完全ネジ部がかかり量に入らないように。力学面では、ナットから飛び出たネジ山がナットの変形を拘束する作用がある、という利点があります。

www.bolt-engineer.net

もしかして、このボルト3山が誤った認識として広まっているのか…?

検索して知ったページなんですが、ボルトエンジニアさんのHPは勉強になる内容が多いです。ねじ山の荷重分担を有限要素法で計算したりしてます。

ねじ山の荷重分担グラフ
(引用元:ボルトの締結で、ねじ山の荷重分担割合は? | ボルトエンジニア)

ねじ山の強度CAE
(引用元:ボルト・ナット締結体の有限要素法(FEM)とは? | ボルトエンジニア)

Fusion360でも簡単な解析は出来ますし、ねじ山モデリングして引張荷重かけて、かかり量を1山から増やしつつ最大応力をプロットしていくと、もしかしたら理論的に3山の正当性が見えてくるかもしれないですね。暇になった時にでも試してみたいものです。

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com