WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

機械設計者が特許出願する時に採用されやすいアイデア

開発部門で働いていると特許出願件数を稼ぐよう御上からお達しが来ます。やる気があるところだとKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として個々人の年間目標に落とし込んでいたりもしますね。僕が就職活動をしてた時代だとキヤノンが新人も年1つは特許出願させるみたいなことを言ってて、ビビった覚えがあります。

そんな僕も社会人として揉まれているうちに年1つくらいの特許出願をしていることに気が付きました。KPIとして設定され詰められた環境で生まれており、例えば適用範囲を絞りに絞って特殊な状況下に限定されたものだったり進歩の幅が小さかったり、会社の利益につながるか疑問なアイデアが多いですが。とにかく社内の特許部門の審査は通せる程度の質を確保しつつ、数を出せるようになりました。

開発部門で働いてる人には同じように御上から特許出願の圧力を受けて苦しまれている方もいるかと思います。今回は社内審査受けの良い(=出願まで持っていきやすい)アイデアのお話をします。激詰めされて辛い人の助けになれば良いなと思います。

採用されやすいアイデア

見た目に分かりやすい新規性をもった部品

特許の基本は新規性と進歩性です。過去と比べて明らかに形が変わっていると食いつきが良いです。

DR(Design Review:設計審査)をやると偉い人やベテランから「何だこの変な形状は!」という有り難い指摘を貰うことがありますが、それは新規性があるということです。その形状に確たる機能があるなら進歩性もバッチリです。堂々と特許アイデアとして提出しましょう。

2つの機能を1部品に集約

複数の機能を1つにまとめた構造は受けがいいです。特許から離れて開発視点で見ても機能集約して部品数を削減するとコスト面で多くの関係者が喜びます。

例えば熱対策と固定を兼ねたり、ESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)対策と補強を兼ねたりですね。過去機種でシート貼りもので何とかしているところを部品形状で取り込めたら、特許チャンスです。

開発機種へ適用

vs社内審査で切り札になるのがアイデアの開発機種適用です。

特許アイデアを出すと産業上の利用可能性、いわゆる実用性を問われます。アイデアが実際の製品に使われるとなると、実用性の点は疑問の余地が無くなりますよね。

またそれ以上に、審査期間に時間制限が設けられるのが大きいです。
製品が世に出てしまうと出願出来なくなってしまいます。このアイデアはここで出せないと二度と出せなくなる、もう時間はないから結論を出してくれ…と審査側に圧をかけると社内審査の通過率がちょっと上がります。

アイデアはキツい所に転がっている

業界にもよりますが例えば電機系のメカ設計だと数ヶ月~1年くらいのスパンで製品開発が行われます。新しいモデルは前の機種より企画サイズが小さく軽くなっていたり、新たな機能のためモジュールが追加されていたり、その両方だったりします。

企画から投げつけられる無茶振りサイズ縮小案に対して数ヶ月とかのスパンだと材料や製造に革新があるわけでもなく、内容物を頑張ってパズルしたり、固定方法の見直ししたり、樹脂やダイキャストを板金にして肉厚稼いだりします。すると強度が落ちたり放熱成り立たず発熱がヤバいなど弊害も出てくるわけです。そうしたキツい課題をどう対処するかが悩みどころで、悩んだ末に産まれるソリューションが特許アイデアです。せっかくシンドイ思いをして産み出したソリューションなら、もうひと手間頑張って特許出願まで持っていってはどうでしょうか。会社によっては報奨金が出るので、ちょっとしたお小遣いになるかもしれません。

まとめ

このブログでは時折特許に対してネガティブな記事を書いてきたので、たまには光属性の記事を書いてみました。

無理くり出す特許には価値が無いかなと思う一方で、特許は研究と同じで何が当たるか分からず数を打つことも大切かとも思うようにもなりました。選択集中して的中させてる例って見ないですしね。

新機種開発をやるってことは既存機種から何らか進歩させることです。進歩がないなら新しく作る意味ないですからね。で、進歩させるには何らか新しい工夫が必要になるはずです。そんなわけで新機種やっていると確実に新規性・進歩性をもったアイデアがあります。出願に足るアイデアかどうかはさておき、ですが。

特許出願して受理されると、当たり前ですが特許検索で自分の出した特許と名前が引っかかるようになります。完全に自己満足ですが、ちょっとしたやった感を得られます。せっかく開発をやっているなら、「これは悪くないかも」と思えた案は積極的に出願狙ってもいいのかなと思います。