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【書評】「僕らはそれに抵抗できない」時間泥棒は如何にして成るか…

手持ち無沙汰になると、なんとなくSNSを開く。
やりたいことがあるはずなのにダラダラとネットサーフィンをしてしまう。

多くの人は上記の経験があるんじゃないでしょうか?少なくとも、僕にはあります。

そんな現代人が陥る新たな依存症「行動嗜癖」について書かれているのが「僕らはそれに抵抗できない」です。

僕らはそれに抵抗できない

僕らはそれに抵抗できない

依存症といえば薬物がメジャーですね。本著では物質依存の最たるモノである薬物が人を依存させるメカニズムを解説、同様のことがソーシャルメディアやゲームなど行動にも起こりうると指摘しています。やめたいのにやめられない、ネガティブな結果が待っていると分かっていたとしても。それが行動嗜癖です。

何が人を行動嗜癖へと導くのか。本著では現代のゲームやサービスが用いているテクニックを紹介しています。例えばマリオシリーズやテトリスが世界中の人を熱狂させるものは何か、みたいに実際のゲームや映画などを例にとって話が展開されていきます。

  • 目標
  • フィードバック
  • 進歩の実感
  • 難易度のエスカレート
  • クリフハンガー
  • 社会的相互作用

で、読み込んでいくと、「あ、これはプロダクトの開発で意識するやつだな」とか「嫌なことをやる気にさせる時に使うテクだな」ってことに気がつくんですよ。依存に使えるテクニックは、うまく利用すれば悪い習慣を捨て去るときに使えるテクニックでもあるんです。

本著で依存させるデバイスと言われているスマートバンドの類だって、もともとは運動不足の解消を目指して、目標を設定してフィードバックを与えたり、ログをとって進歩を見える化したりするわけです。さじ加減ひとつで人を救ったり、破滅に導いたりできるわけで、現代のプロダクト開発における難しさを実感させられます。実際、開発者自体がコントロールしきれず、意図しない依存者を続出させてしまった例も紹介されています。

テクニックを理解した上で、依存から身を守るにはどうしたらいいでしょうか?1つの解決策として環境を変える重要性が言及されています。ベトナム戦争でヘロイン漬けになった米兵が、回復後にほとんど再発しなかった話が載っていましたが、そこにも繋がる内容ですね。

読了後に自分の行動を振り返ってみると、自分は冒頭にお話した有様です。行動嗜癖に陥っていると言えるでしょう。
タイトルの通り、「僕らはそれに抵抗できない」。なら環境を変えてデジタルデトックスするべきか、それとも望ましい行動を取れるよう新たな依存先を作っていくのか…

あらゆるサービスが人を誘惑する中でどのようにネットやデジタルデバイスと付き合っていくのか、自分はもちろん子供の事も含め、真剣に考えないとダメだなと考えさせられた一冊でした。

僕らはそれに抵抗できない

僕らはそれに抵抗できない