製造業の海外シフトにより製図の世界もグローバル化しつつあります。JIS規格も、2016年に制定されたJIS B 0420に見られるように幾何特性を考慮した製図へのシフトを促す流れが押し寄せています。
ただ幾何公差の製図お作法を知るだけでは意味がなくて、どう測定するのかを把握したうえで製図しなければなりません。でないと幾何公差を設定していたとしても、製造と設計での不幸なミスコミュニケーションが発生してしまいます。
前置きが長くなりました。今回紹介するのは幾何公差の測定テクニックに主軸を置いた書籍です。
その幾何公差、どう測定してる?
幾何公差をどう測定するか?大抵はCMM、いわゆる三次元測定機で測られているものでしょう。ただ生産現場ならいざ知れず、設計現場に三次元測定機があることは稀ではないでしょうか?
本著ではそれぞれの幾何公差に対して身近にある道具...ハイトゲージやマイクロメータ、ブロックなど...を用い、創意工夫をもって幾何公差の測定を行う例が紹介されています。
製造側の寸法検査では問題ないはずだが、何かおかしい。そうした時に泣き寝入りせずにデータをもって反撃できる手段を増やせるのは、実に良いことですね。もっとも、本来はお互いが同じものに対して同じ測定結果が得られるよう、測定方法や測定ポイントについて図面をもって合意してあるべきではありますが。
幾何公差入門書として優秀
測定テクニックを紹介している本ではありますが、幾何公差の基本が一通りそろっています。
データムの考え方、製図上のお作法、独立の原則と包絡の条件、そして各種幾何公差の解釈の仕方ですね。
なので、設計者視点でも幾何公差を理解する最初の一歩として選ぶのも有りです。
公差域の解釈に関する説明については、これまで読んだ書籍よりも図を大量に用意し、詳細に説明されていました。自分としても位置度でφ以外の規定が出来るのを知らなかったので、大いに勉強になりました。
まとめ~なぜ幾何公差
現場で役立つ幾何公差の測定テクニック、を紹介しました。幾何公差は大体の測定がCMM頼りと思っていましたが、昔ながらの道具を組み合わせれば測定できるものですね。正しい測り方の追求、納品物のOK/NGを決めるので大切です。
ちょっと話は変わりますが幾何公差、偉い人々が期待しているところに最大/最小実体公差方式の利用による公差域の拡大、それによる歩留まりの向上があると思ってます。
この方式で公差が拡大できるのはまぁその通りなのですが、大量生産品は個々の部品サイズのトレサビリティを確保しつつ相性の合う相手を組み合わせるシステムを作ること自体がハードル高いです。時には別メーカーの品と嵌合したりもするので測定方法の違いから狙ったようなサイズ関係になってなかったりとか。色々考えていくと外注やめて自分のところで全て完結させるくらいの覚悟がいる気もします。
とはいえ設計者がやるべきこと、図面に入れ込むべきことは変わりありません。自分の設計を担保するために譲れないポイントは何かをきちんと記載して白黒の付け方をはっきりさせることです。サイズ公差の時代も幾何公差の時代もそこに変わりはありません。そして設計者としては、譲れないポイントがどのように評価されているかを把握しておくべきで、気に入らない評価のされ方をしているなら自分から提案していくべきでもあります。
そんな時、本著で紹介される創意工夫にあふれるテクニックが役に立つことでしょう。
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