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エンジニアとメカエンジニアの年収格差を調べる

千円札

Twitterやはてブを見てると、最近のエンジニア(ソフト系)の待遇が良くなってるんだなと感じます。働き方は自由度が高そうで開発環境も整い、そして何より、年収が高そう!

羨ましい限りです。

一方で機構設計もとい、ハードを扱うメカエンジニアはどうでしょう?

自分の観測範囲だと、引く手数多だという話は聞きませんし、お賃金が向上しているイメージは有りません。エンジニアという単語の括りに入ってない感じすらあります。4大力学をバリバリに使う、エンジニアリングという単語を具体化したような職なんですが・・・。

プログラマは稼げないし引退時期が早く、技術の入れ替わりが激しい。
対して、機械系は潰しが利きやすく歳とともに積まれる知見が資産となり市場価値が上がっていく。なんてのが、自分が学生の時の見方でしたが、今や立場は逆転し、いわゆるエンジニアとメカエンジニアの待遇格差が広がっているように思います。

いつ逆転したのか、どのくらい差があるのか?

そんな疑問に駆られ、ソフト系職種とハード系職種の年収推移を確認してみました。ネタ元は厚生労働省が実施している賃金構造基本統計調査です。

賃金構造基本統計調査 | ファイルから探す | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

今回調べた職種と結果

ソフト系の職種としてはシステムエンジニア・プログラマー・デザイナーを選択しました。
ハード系は、設計という職種が無かったので、図面を扱う意味で機械製図工、建築・機械系の人が多い技術士、そして機械系の給料を一番近く反映しているであろう製造業の平均を選択しました。

期間はデータベースから読み取れた2010年-2017年で取得しています。「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与その他特別給与額」から年収を算出しています。手取りではなく、額面の値です。

ソフト系を実線、ハード系を点線にしてグラフにまとめて比較すると、下記の結果が得られます。

ソフト系vsハード系 年収推移グラフ

おや?

プログラマー、そんなに高くない。伸びてない。

プログラマーが、もともと予想してたほど伸びていません。ほぼヨコヨコ、微妙に下がっているようにすら見えます。

デザイナーも、多少の浮き沈みがありますが2010年の水準から変わっていません。

システムエンジニアは年収こそ高水準なものの、伸びという点ではイマイチです。待遇が改善しているというより、年によって当たりはずれがあるように見えます。

ここ数年、日経平均からすると景気は良くなっていたはずなんですがね。

予想に反し右肩上がりのメカ系

メカ系は、2017年に落ち込みが見えますが、2010年比でみると、どの職も右肩上がりで伸びています。機械製図工とか、CADが普及して2D図面の製図が容易になったことから、どんどん需要が減っているモノかと思いましたが。そして技術士の伸びが凄いですね。詳細分析していないので完全に印象論ですが、メカ屋というより、建築系の景気が強く影響している気がします。

いずれの職種においても、景気の回復が直接収入に響いているかのようなグラフですね。僕が感じていた「ハード系の待遇がソフト系に抜かれた」という印象は、この統計を見る限りは錯覚だったようです。

一部の厚遇が目立つ?上位が利益を独占する?

プログラマーの待遇のイメージと実際の乖離は何故生じたのか。

思うに、一部の極端に厚遇な人たちが目立っており、厚遇層とマス層とが完全に別世界なのかなと思います。

ソフトという広い括りで盛り上がっているのではなく、ごく一部の領域、データサイエンティストやA.I.といった分野のみ待遇が良くなっているんでしょうね。そして、それらの会社の規模はそれほど大きくないので、プログラマ全体の統計に与える影響が限定的になっている、と。

ソフト業界の特徴である、勝者が総取りになりやすいというのも、全体統計によろしくない影響を与えているかもしれませんね。

メカも全体的に良くなっているのか?

とはいえ、ハードはハードで、全体的にそんな良くなっているのか。という疑問は残ります。

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製造業をもっと細かく見ていくと、輸送機械、つまるところ車系の厚遇が目立ちます。車系は労働者数でも製造業の1割以上をカバーしており、ここら辺のデータに製造業の結果が引っ張られて、全体が良く見えているといえるかもしれません。

まとめ

エンジニアとメカエンジニアの待遇格差が広がっているのではないか?と思い年収推移を比較してみました。

結果として待遇格差は広がっていました。メカ側の方が厚遇、という自分の予想とは反する方向でしたが。

こうして統計で見ると、普段の自分が持っているイメージというのがどれだけ偏っているか、を認識させられます。

物事を全て正しく把握するのは困難でしょうが、「自分の認識は偏っているかも」という意識を片隅にもって置き、多方面の情報を柔軟に取り入れて判断していく、って姿勢を保ちたいものです。

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com