ちょっとした好奇心から、ダイソーのBluetoothスマホシャッターを買いました。
ボタン電池付きで300円。製造業やってる人間からすると、笑いが出るくらい安いです。
安く作るってどういうことなのか?
興味が湧いたので、どんな構造をしてるのかメカ屋目線でバラして見て見ました。
安く作るための割り切り
ボタン周囲に切り欠きが見えます。このちょっとした引っ掛けでボタンを固定してるみたいですね。
全周フランジにして他に固定用の部品で脱落防止する、というのがよくあるボタンの構造です。
それを、外観を少し犠牲にして1部品で行っているあたり、安く作る割り切りが見えます。
ボタン単品で撮ったものです。サイドゲートでキャビ-コアだけで作れるシンプルな形をしています。
引っ掛けの部分は「パチン」とはめるタイプで、引っ掛ける負荷で爪の根本が白化しています。何度も組みバラをするとすぐ折れそうですが、これも割り切りポイントですね。
電池フタはネジ止めです。ネジはタッピンねじで、かかりが浅く下手な人が開閉するとネジバカになりそうです。そして、ここでも樹脂が白化しています。電池接点バネを避けた形状、薄く肉がつながっている箇所で、いかにも弱そうに見えます。電池入れるとバネが変形して、常にあたっている状態になるのかもしれません。もしくは、組み立てでやっちゃったか。
接点バネをネジ締結部から遠ざけて、もっと深めに樹脂を逃げればなんとかなりそうですが、形状変更するお金をケチったのでしょうね。割り切りポイントです。
バラしてみたところ。メインの筐体2つはピンとボス穴を軽圧入して固定しています。
軽圧入は微妙な調整が難しいです。最近のガンプラとか素晴らしいですね、しっかり固定されるし、再取り付けしても一向に割れません。このスマホシャッターは負荷で樹脂が白化しています。何度か取り付け直すと、はまらなくなりそうですし、経年劣化で圧入の固定が弱くなりそうです。
ボタンのようにパッチン爪にすれば比較的固定は長持ちしそうです。ただ、パッチン爪にすると、アンダーカットが必要になります。となると、金型に傾斜ピンが必要になり、金型費が上がります。
この軽圧入も安く作るための割り切りですね。
できる限りのこだわり
安く作ることを優先している部品ですが、できる限り製品性への配慮も見られます。例えば樹脂を流す入り口であるゲートの方式、位置です。
メインの筐体はピンゲートを、製品外観から見えない位置に落としています。
ピンゲートを使うと金型は3プレート構成になり、型費は上がります。一方、ゲート処理が自動で行われるので、ゲートカット工数は削減できます。とはいえ、ゲート処理はロボットアームでニッパーカットしたり、プレスで一気に落としたりなど、別途自動化できるものです。
コスト的に突き詰めた結果のゲート方式7日もしれませんが、間違いなく外観に配慮されたゲートだと言えます。
電池フタはサイドゲートです。写真がピンぼけでよくわからんですね。
サイドに落としているものの、組めば隠れてしまう位置です。このあたりにも、配慮が見られます。
もう一回この写真。安く作るならiOSとandroidで同じボタンを使ったほうがいいんですが、きちんと大きさを分けています。ボタンのサイズで、誤操作を防止しているわけです。
基板、白い印刷がされています。基板には層と層を接続するビアという穴が空いており、それが電池とショートしちゃうのを嫌ってのものでしょうか。もしかしたら、基板がむき出しだとかっこ悪いという意識もあるのかもしれません。
接点バネは基板を貫通するDIPタイプ。表面実装(SMD)タイプと違って衝撃とか振動に強いので、僕は好きです。持ち運んで使うもの、ということで外力へ配慮した結果なのかもしれないですね。
まとめ
ダイソーの激安スマホシャッターを分解してみました。
安く作るための割り切りは、見ていて清々しいものがあります。いろんなところ白化していて危なっかしくもありますが、「細かいことはあんまり気にするな!」という自由奔放さが現れていて良いですね。日本だと、こういう割り切りした物作りは絶滅してるイメージです。この自由さは、羨ましくもあります。
で、このシャッター。Amazonだと100円台で売ってたりするんですよね。
いかに安く作る工夫があるとはいえ、樹脂部品6ピースに基板、電池。これで100円台で売れるというのは、意味がわからないですね。
安く作るには金型にもそれなりの工夫がある、とは耳にしたことありますが、実際にどうやって安く作ってるか、現場を見てみたいものです。
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