先日お披露目となった新型Mac Pro。特徴的な開口のデザインは"おろし金"、"チーズおろし"と家庭的な愛称を付けられ話題沸騰と相成りました。
寄った写真を見ると3次元形状が絡み合って開口が生まれる、面白い形をしています。簡単に作れそうだったのでFusion360でモデリングしてみたら、それっぽくなったので、モデリングの手順を書いておきます。
外形ボディをざっくり作る
サイズは21.8cm x 45.0cm x 52.9cmだそうです。高さ52.9cmは足や取っ手の部分を含んでのものだと思うので、本体部の高さはもうちょっと低そうです。今回はざっくり高さ40cmとしておきます。
スケッチ描いて、押し出して、Rつけて。
Rの値はネットの画像みてざっくり決めました。デザインの半球形状が15mm前後とネット記事にあり、それが間に平面部(数mm x7)をもちながら8個並べるだけの幅が残ればいいのです。拘る人は、画像を読み込んでピッチ、Rを合わせると完成度が上がり満足出来ます。
外周を内側にオフセットして「切り取り」で押し出します。
Mac Proの特徴的なデザインは、半球形に抉った形状が、表と裏の面でオフセットしつつ同ピッチでパターン化された結果、出来上がっています。
半球が重なって穴になるので、板厚は半球の直径以下じゃないと駄目です。今回は15mmの板厚としました。
スケッチは天面に描いてまして、そのまま押し出すと天井にも穴が空くので、両方向押し出しにしつつ同じ方向に押し出します。これにより、天面からオフセットした位置から切り取りが可能になるわけです。今回は10mm天井厚みとして確保しています。
スケッチで検討しよう
穴のピッチを検討します。ボディ表面をスケッチ面にします 実物が測定できず、えぐり半球の寸法がわからないので、勇気と思いきりで初期は直径15mm、ピッチ20mmと設定しました。
横のピッチは20mmと決めてしまえばそれまでですが、縦はちょっと計算が必要です。 ただ数学に興味を失った大人なので、紙上計算はやめてCADで穴を描いて縦方向のピッチを導出します。参照寸法こと()寸法である34.64mmが縦方向の欲しかったピッチです。
球で削り取ろう
Fusion360では球のソリッドボディを作るコマンドがあります。先程のスケッチで作った円の中心を使い、球でボディを削ります。
ここで直径18mmとしているのは、15mmだと平面部分が広くて、Mac Proの写真と差分を感じたからです。
パターン化は計算オプション「同一」で
同じ形状を作るにはパターン化が有効です。今回は縦横方向のパターンなので、短形状パターンを使います。
- パターンタイプ:フィーチャ
- オブジェクト:先程切り取った球
- 方向:縦横のエッジを拾う
- 距離タイプ:間隔
- 計算オプション:同一
たくさんの形状を作る時は、計算オプションを【同一】にすると軽く仕上がりそうです。
あとは繰り返しの個数とピッチを埋めれば出来上がりです。同じ事をもう一度繰り返せば、下記のようなボコボコが出来上がります。
内部側の半球えぐりをデザインする
内部側も、基本的に同じことを繰り返すだけです。
スケッチ円が表側と重なる箇所が、開口となる箇所です。せっかくCADを使っているので、なんとなく開口の見た目が均一になる寸法を、数字を弄りながら探せばいいと思います。
出来ました。
まとめ
Mac Proの特徴的なデザイン箇所をモデリングしてみました。
穴を開ける手数は10個だけです。めちゃくちゃモデリングに優しいデザインですね。
反面、製造性や機械特性に着目した場合は、うーん…と頭を捻るデザインです。
2次元的な、ただの穴と異なり、3次元の交わりで出来る穴は、公差の影響がシビアになります。
ボディを作るとき、外と中のCNCはおそらく別工程で削っているかと思います。CNC工程が違うとジグへの取り付けなどによる公差が2回のります。1工程で±0.05mmずれるとして、2工程だと±0.1mm。 これが、球が離れる方向同士になると、開口としてはどの程度影響していくのでしょうか?CADなら簡単に確認できるので、今度見てみたいと思います。
また放熱、内側の半球形状は排熱しようとする空気の流れに抵抗しそうなんですよね。こんな感じで跳ね返された熱風が、外に出ようとする熱風とぶつかって冷却効率が落ちそうな。
そんなわけで、このデザインは、エンジニアリング起因というよりデザイン的な意味合いが強いのかなと思います。ま、真実は中の人のみぞ知る、です。
とにかく、モデリング自体は簡単なので、3Dプリンタでケースを作る際は、チャレンジしてみるとMac Pro感が出ていいかもです。サポート材は100%剥がしにくいと思うので、その点だけご注意を。
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