WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

大らかだった時代に突貫でUV接着工程を作ったお話

ご無沙汰です。

最近はお仕事の関係でプライベートの時間と精神がゴリゴリ削られる日々が続いております。こういう状況に身を置かれると昔の経験が走馬灯のように走り抜けて行くわけで、僕もそれなりの年になったので昔は良かったなぁ的な記事を書いてみたい気分になったわけです。

むかし、ゴム足部品を設計してた時のことです。

ゴム足は樹脂や金属でできた部品が接地して机を傷つけるのを防いだり、筐体の平面度の乱れから来るガタつきをクッション性で吸収したりする部品ですね。置いて使うものにはだいたいついてると思います。

僕は電機の設計者なのでゴム足もそんな大したものではなくて、単なるゴム材の打ちっ放しだったりするわけですが、この時担当されていたデザイナーさんが大変にシュッとしたゴム足をデザインされていて、これを僕がノークレームでモデリングして部品を起こしてしまったのが悲劇の始まりでした。

シュッとしたゴム足はかっこよかったんですが、すごい簡単に取れちゃったんですよね。

このゴム足は両面テープで貼り付けるタイプだったのですが、接着面積が少なかったんですね。工場の検査工程で静電マット上で完成品をいろいろ動かすのも良くなかった。低接着力と高摩擦が合わさった結果のポロポロ問題です。

この事態を解決すべく色々やったわけですが、その中の一案として出たのがUV接着による補強です。剥がれは接着部の端が剥がれることで起こるので、その端の部分をUV接着してやれば剥がれないんじゃないかと。UV樹脂は透明なので見た目への影響も少ない!と、今の時代・今の部署で提案するとムラハチにされるだろう、クレイジーな案でした。透明とはいえ接着材塗りっぱなしのものが外観で見えてていいわけないだろと。

とはいえ当時は若く、事態は深刻でした。プロジェクトチーム一丸となって模型屋やホームセンターを巡り、片っ端からUV樹脂を買っては固めて見た目や強度・調達性を評価し、最終的に素性のよかったUV樹脂を試験ロット分携えて、僕は工場へ飛ぶことになりました。

工場についた僕は案内された部屋にてUVライトを固定し、照射時間を数えるストップウォッチを用意しました。しばらくして、ゴム足がついた状態の仕掛かり品が運ばれてきます。次々に。それらに僕は、機械より素早く正確にUVを塗布していき、指定時間UVライトをかけて固めていきます。

BOMに入ってない材料を使っていれば、製造部でもなんでもない人が作業やってて、マニュアル感溢れる作業はばらつきも大きく、と現在僕が仕事で色々言われている物事が≒0に見えるほどにヤンチャな対応でした。今にして思うと関係各所がよくやらせてくれたなという思いしかないです。

結果的にはUV接着でも強度が足らず苦難の日々が続くことになります。

僕はこの対策に当たってた当時も結構しんどい状況だったのですが、同じ設計チームだけでなく製造部門とかも協力的で、目先の問題に対して今できる範囲でどんな解決策があるか、をみんなが真剣に考えてくれてました。精神的に支えられているように感じたおかげでフットワーク軽く動けましたし、物理的・時間軸的に可能な対策には付き合ってもらえる大らかさが各所にありました。

時代の流れか働く場所の文化の違いか、今は大らかさがあんまりなく感じますね。責任区分を明確にして極力我関せずのスタンスをとったりですとか、正論をもって相手の非を突く姿が目立つですとか。そういう場面を多く経験すると、自発的に動きにくいんですよね。人間完璧ではないので動くとボロがでるところもありますし、ボロを抑えようと細かいところまで詰めて動こうとすると無限に工数がかかって結局動けないですし。

この記事はまぁ愚痴なのですが、大らかな時代には問題を解決するぞ!という本質に対しての行動ができていて、技術的にどうする、みたいなことにリソースの多くを割けてて良かったなと思う今日この頃です。