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機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

メカエンジニアに必要なスキル

ハードウェア系のスタートアップが増え、個人でモノづくりする人も増えてきました。フリーの3DCADが実用レベルになったというソフト的要因、f3Dプリンタを始め初期投資の敷居が低い製造方法が増えるとともにfab施設が充実してきたとという製造要因が合わさった結果かなと思います。

そんな環境の中、メカエンジニアを目指す人が増えるんじゃ無いかと希望的観測を胸に、現役メカエンジニアから見て必要なスキルを羅列してみます。メカ屋も意外と必要なスキルの幅が広いんですよ?

力学の知識

・(全分野共通) 材料力学
・(分野によって) 機械力学 / 熱力学 / 流体力学...etc

設計を行う上で強度に関する知識、つまり材料力学の知識は必須です。あとはプラスで、作ろうとするものに特化した力学の知識が必要になってきます。

動きものならば機械力学、熱が発生するものなら熱力学、エンジンなど流体を扱うなら流体力学…といった具合です。

製造方法の知識

・射出成形の知識
・プレス成形の知識
・ダイキャスト(チクソモールディング)の知識
・切削加工の知識
・3Dプリンタの知識 ...etc

製造方法によって作れる形状の得意・不得意があります。3Dプリンタ・切削以外の製造方法は作れる形状の制限が大きいので、知らずに設計をしていると「いざ作ろう」と言う時に痛い目を見ます。そういう意味で、製造方法についての知識が必要でしょう。

上に挙げているのはほんの一例です。製造方法って多種多様で、自分の身近な物がどうやって作られているかを考えると、意外と面白かったりします。下記の本には電機から家具、オブジェまで幅広い製造プロセスが紹介されていて、「これってこうやって作ってたのか!」という発見が沢山ありました。

材料の知識

・材料の強度 (ヤング率・靭性・硬度)
・耐腐食性/ 耐薬品性
・加工性 / 成形性
・アレルギー
・コスト ...etc

部品の材料を選定するには幅広い材料の知識が必要です。強度をもたせることを大前提に、使用環境や部品形状を考えた上で、出来るだけ安価な材料を選定する必要があります。

材料は単なるカタログスペックでは測りきれない物が多く、例えば外装に使ってた樹脂が日焼け止めクリームによるケミカルアタックで割れたり、堅い素材が靭性の欠如で一気にぽきっと折れたり、エラストマが加水分解でべとべとになったり…

製品を世に出して月日が経たないと分からない事も多く、経験知が効いてくる分野です。

管理方法の知識

・測定器の知識
・製図の知識

物を作った後で、その部品が設計通りであることをどう保証する/させるかというお話です。細かい寸法や表面仕様などは図面で取り交わすのが常なので、図面の読み書きは出来ないと困ります。また測定が適切に行われていなければ部品の管理も不適切なものになります。測定に関する知識も併せて必要です。

ソフトウェアのスキル

・CADオペレーションスキル
・CAEオペレーションスキル

悩ましいのがソフトの使いこなしです。CADもCAEもデファクトスタンダードが無く、「このCADを覚えておけ!」と提示しにくいです。というか、製造の現場で使われるハイエンドCADはライセンス量が100万とかなので、個人では中々手が出ないんですよね。

CATIA、Creo、NXのどれかが使えれば、一先ずは働き先はあると思います。 

CAEは解析内容によって信頼度が全然違うので、操作スキルだけでなく解析内容がどの程度信頼出来るかを判断するだけの経験知も必要になってきます。

各国の法規制についての知識

・UL
・Rohs
・CE ...etc

ハードウェアは何かあった時に人体や環境に悪影響を及ぼすので、各国が色々な規制を設けています。通信機器の技適マークがどうこうとか、時折話題になったりしてますよね。本当に面倒で、頭が痛くなってきますが 製品として売り出すならばキチンと対処しないといけません。ほんと、よく分からなくてカオスなんですがね…。

コミュニケーションスキル

・(海外の工場いくなら)語学力
・お国柄についての理解
・コミュニケーション力

メカ屋は多くの人と関連をもちます。電気屋、品証など自社の人とは頻繁に話をしますし、製造委託先の技術、営業の人とのやり取りも発生します。量産製造は海外にて行うことも珍しく無いので、その場合多少なりとも語学力が必要になってきます。

スケジュールを組む時には海外の長期休暇を念頭に置く必要がありますし、日本人のように「Just do it!」で残業頑張ってくれる現地人はほとんどいないという、労働観の違いも受け入れておいた方がいいでしょう。

まとめ

ざっと書いてみましたが、思い返すとまだまだ出せそうです。(特許とか、電気とか)

エンジニアの仕事って狭く深くだと思っていましたが、改めて考えるといろんな知識・スキルが必要だなー、と言う印象です。たぶんこれってメカエンジニアに限らず、あらゆる分野の仕事もそうなんじゃないかと思います。

やっている人にしか分からない苦労があるということですね。そんなわけで皆さん、人の仕事には経緯をもちましょう。メカエンジニアにむかって「箱書くだけでなんでそんなに時間かかるの?」とか言っちゃダメですよ。

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中国人は油断ならないですが仕事は貪欲で、割と日本人寄りです。