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他人のCADデータの引き継ぎは、「履歴を無視して付け足していく」が正解である

開発中の人事異動、というのは珍しいことではありません。その際、残された人に、もしくは新しく来た人に、それまでの開発成果を引き継ぐ必要があります。

メカ屋の引き継ぎは、物と図面と課題リストさえあれば、重たい案件出ない限りなんとかなりますが、CADデータの引き継ぎだけは毎度苦戦します。

他人のCADデータはカオス

3DCADのモデリングは、決まったルール・規則みたいなのがなくて、各個人が自由気ままに作っています。

  • どこの面からスケッチを書いているか
  • スケッチの参照をどこからとっているのか
  • 履歴を編集する思想か、履歴を積み上げていく思想か

このあたりがバラバラです。外部参照をとったりしていると、リレーションがこんがらがっていて、もはや手を付けられません。悲しいことにこのパターン、結構あるあるです。

結論として、他人のCADデータというのは、下手に触ると危ないのです。

リレーションを把握してないと何が危険なのか

こんな感じのデータがあるとします。この部品を、出図直前に急遽ぶん投げられたAくん、諸事情でボスの大きさを変更しようとします。

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そこでデータ履歴をさかのぼって、ボスのパラメータをちょちょいといじるわけです。しかし、他のボスにもイコール拘束をつけていることを見落としたAくんは、他のボスのサイズが変わった事に気が付かないのでした。

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このデータで出図し、金型を掘ってものが出来上がり、初めてAくんは異変に気が付きます。そして設計変更の紙を切り、上司に怒られ数十万の費用を払って、本来の形状へと金型を変更するのです。

今回のモデルは簡単に気がつけるかもしれませんが、実際お仕事の場で目にするデータはリレーションも形状も複雑です。

コメントは無力

コーディングの世界ではコメントや命名で、モジュールの機能やインプット・アウトプットの説明をしているものがある、と聞いています。

いいですね、メカCADにもそういう文化がほしいです。CADのフィーチャーって、「押し出し」が重なってるばかりで、カオスですからね。

自分は時折、ソフト屋さんに憧れてフィーチャー間にコメント書いたりしますが、まぁ、あまり効果がないです。僕がどう気をつけてモデリングしようと、他の人の作り方、寸法の入れ方と異なる思想でつくられていたら、それは「カオスなデータ」となります。

付け足しは安全

なら他人のデータを安全に引き継ぐにはどうすればいいか。

答えは、履歴には触れず付け足していくだけにする、です。

履歴が長すぎてデータ自体が重くなっているなら、いっそのこと形状だけお手本にして、1から自分で作るのも有りだと思います。これは他人のデータのみならず自分のデータにも有効です。

例えば検討に検討を重ねた結果、履歴が長くなり編集での形状変更が困難になる、という状況、初期検討をしたことある人なら経験するんじゃないかと思います。
検討の結果、機構やデザインの方向性がついた段階で、一度作り直して編集での形状変更が簡単な履歴にしておくと、その後の作り込みは楽になるし、データ自体も軽くてストレスフリーになります。

まとめ

他人のデータを引き継いで履歴を遡るのは危険、という話をしました。

今までも何度かブログに書きましたが、3D CADって使い方が完全に個人プレーで、組織レベルでも全然作り方が統一されてないんですよね。CADの自由度が高ければ高いほど、よりデータは他人が触れないものへと進化してしまいます。

多少モデリングの自由度はなくなりますが、寸法の追い方とか、外部参照の使い方とか、明確にルール化しておいた方が混乱少なくて済んで、最終的な効率はいいかもしれませんね。

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com

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