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【3DCAD】形状変更時にエラーが起きにくいモデリング方法のTips

ヒストリー型の3DCADは履歴を遡っての編集が行なえます。これが設計検討には便利である一方、過去の履歴を編集することで将来のフィーチャーが参照している点・線・面などの要素を見失い、エラーを吐くこともあります。急いでる時にエラーで形状作り直すとなると、大変なんですよね..

今回はヒストリー型の3DCADで設計を行う上で、エラーが起きにくい、また起きても修正が用意になるTipsを紹介します。

スケッチ面の基本は基準面 or 基準面からのオフセット面

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スケッチするときは基準面由来の面で書くことを意識しましょう。特に形状をカットする場合は基準面からで事足りるケースがほとんどです。

形状面は設計検討時には容易に消えます。もっと怖いのは他のフィーチャーを変更した際につられて動いてしまうことです。

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このことを認識した上で形状面をスケッチ面とする考えもあります。うまく使いこなせばモデリング修正の工数を抑える事ができるのも事実です。が、自分が参照関連をコントロール出来る範囲を意識しておくようにしましょう。

押出範囲でオブジェクトまで、を避ける

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押し出しでオブジェクトまで押し出す前に、他のオプションで同じ形状で出来ないか考えてみましょう。

Fusion360には無かったですが、他のオブジェクトに突き当たるまで押し出すオプションがあるCADもあります。

点より線、線より面の要素を意識する

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参照エラーは要素が消えることで起こるので、極力消えにくい物で取るのがおすすめです

参照は統一する

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形状が込み入ってくると、1つの参照がほしい時に複数の要素が使える場面が増えます。参照関連を意識せずにいると下記のように、押出の何れかが変更、削除された折に毎度エラーが起きる状態になります。

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参照を統一すると大本がいじられない限りは他のフィーチャーの変更がエラーの要因になることはないですし、参照箇所をシンプルにすると参照状態の把握も容易です。大本が変わると全体がエラーを起こすこともありますが、参照状態を把握できていればエラー修正作業自体はあまり時間がかかりません。エラー時に「これ、どこの参照とってたのかな?」と調査することこそ、大幅に工数を取られる作業なのです。

複雑なスケッチを書かない

スケッチでフィレット付けるなど、線が多い複雑なスケッチは避けたほうがよいです。線が1つ消えるだけで、それぞれの線が持っているIDがシャッフルして、参照切れの原因となります。複雑な形状を作る場合も、シンプルなスケッチ複数の組み合わせで作ることを意識しましょう。四角と丸があれば、大体の形状はなんとかなります。

ドラフトとR付は履歴の最後で行う

ドラフト、Rを途中でつけると面や線に付けている参照が見失われます。ドラフトの場合、面が傾斜することでエラーは起きないものの意図しない形状が出来ている、という自体になることも。Rは要素が増えてデータが重くなったりもするので、設計に絡んでこない箇所は特に、最後まで付けない方が良いです。

ボディの分割は最後の最後に行う

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マルチボディ対応のCADで起きる問題です。
押出やカットはボディの要素に紐付けられているので、途中でボディが分割してボディの要素が変わると、すべてのフィーチャーがエラーになります。なのでボディを分割するのは最後の最後にすべきです。自分の場合、繋げておくための助長な形状を付けておき、最後に切り落として分割する、という手法をよく使います。

例外として、分割後でないと作れない形状は分割後に作ります。

アセンブリ拘束は軸や座標系で行う

Fusion360では座標系を新しく追加するコマンド無いですが..

アセンブリ拘束を入れる際は座標系どうしを結びつけるのがセキュアです。面や線だと、設計しているうちに見失ったりしがちです。大物の部品は特に、原点どうしをあわせて同じ座標系で設計した方が、部品間の合わせを考える時に有利です。

警告を放置しない

f:id:temcee:20210117224744p:plain 警告出てるけど形状壊れてないから良いか。そう言って警告を放置する人がいます。後々痛い目を見るので、警告のうちにきちんと潰しておきましょう。

また感覚ではありますが、警告が多く出てるモデルを開いてると、CADがクラッシュする率が高いです。

抑制したままにしない

抑制を放置している人の10割が、そのフィーチャーが何だったのか覚えてません。エラー修正の際に誤って抑制解除してしまい、フィーチャーの役目やエラーの要因を掴むのに四苦八苦するのが関の山です。抑制して数日戻さないようであれば、消しましょう。

まとめ

CADのエラーに強いモデルを作るためのTipsを挙げてみました。

この記事はテルえもんさんの記事を読んで書いてみようと思い立ったものです。

note.com

エラーが起きる原因や、内部IDの考え方など重要なお話が出てきます。こうした根本を抑えておけば、自ずとエラーが起きにくいモデリングが分かってきます。

ただ実業務だと、仕様変更に振り回されているうちに意図せず汚い履歴が積み重なり、参照関係も複雑になってしまう場合があります。そうしたとき、勇気を出して1から作り直すことをおすすめします。直近の業務負荷と相談にはなるのですが、複雑なモデルを何とか使いこなすよりも、シンプルなモデルで作り直す方が総工数で有利になるケースもあります。弄っていて、ストレスも少ないですしね。

CADのエラーは兎にも角にも参照です。無駄な参照を取らない、を意識しましょう。

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