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【CAD】フィーチャーの抑制で起きた事故の話

履歴型のCADでは、履歴にあるフィーチャーを抑制することができます。フィーチャーで作った形状を消しつつも、再び必要になったときに抑制解除で元通りの形状に復帰できる機能です。

CADの抑制

使いようによっては便利な抑制ですが、事故が起きやすい機能でもあります。今回は自分の失敗談を交えつつ、抑制を使う上で意識しておいた方がいいことをお話していきます。

フィーチャーの抑制を使う場面

抑制の使い所は、下記の様な場面でしょう。

  • 異なる案を並列検討時に、不必要な形状を無くしたいとき
  • 履歴編集で出たエラーを後で修正したいとき

前者について、例えば同じ機種で防水と非防水の両方の仕様を検討する必要があるとしましょう。防水仕様では穴付近に止水のためのテープや、パッキンのスペースが必要な一方、非防水仕様だとそれらは不必要です。なので、非防水仕様の検討をするときに、防水形状のフィーチャーを抑制する、みたいな使い方をします。

後者は、あるあるです。履歴をいじった後に履歴の先頭に戻ると、いくつかのフィーチャーでエラーを吐く、という経験はCADを使う人なら誰でもあるでしょう。その場ですぐ直せば問題ないし、そうあるべきですが、エラー修正が後回しにすることも、ままあるのです。

人から引き継いだ部品で…

抑制をした時、データを弄っている人はエラーの要因や、そのフィーチャーの役割を覚えています。しかし時間が立つと忘れます。人が変わると、抑制されたフィーチャーの意図はわかりません。
抑制されていることに気付きすらしないまま、抑制を解除してしまうこともあります。 僕の失敗が、それでした。

人から引き継いだ部品を編集して出図し、しばらく後に送られてきたT0品(型が出来て一発目にうった部品)を確認したところ、覚えのない形状があることに気がついたのです。

このままだと組立時に干渉が起きる、ということで至急金型に改造を入れて事なきを得ました。事なきと言っても形状を無くす変更なので、金型を一部切って入れ子にして、改造費が二桁万円かかったわけですが。

抑制を解除したことで起きた失敗

なぜ覚えのない形状が出来ていたのか。振り返ってみると、抑制が原因でした。

エラーによる抑制を解除・修正している際に、前任者の抑制フィーチャーも解除していました。そして、そのフィーチャーがエラー無しに通ってしまったために以上に気がつけなかった。これが事の顛末です。

出図前に干渉チェックでしっかり確認出来ていなかったのも良くないのですが、よくわからない抑制フィーチャーが残っていたのが事故につながったわけです。

人に引き渡すデータは抑制を消す

設計中は色んな要素を検討します。その中で、フィーチャーを抑制しておきたくこともあるでしょう。

ただ、設計方針が決まったり、人に引き渡す段階になったら、本筋の形状と関係ない抑制は削除し、必要なものは抑制を解除して形状にしておいたほうが、事故が少なくなると思います。

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