WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

雑に物事を進めていると鬼厳しかった上司を思い出す

最近は忙しくなると仕事が雑になる。いや、昔も忙しいと仕事が雑になった。意志と論理をもって決めた設計を他部署・他社との面倒な折衝で折れたり、スケジュールに追われて十分突き詰めてない課題にとりあえずの解決策でお茶を濁そうとしたり。残念ながら、僕にはそうした傾向がある。

今と昔で違うのは周囲の環境だ。今はテレワークで密な連携がとりにくいし、上の人も忙しいのだろう、大きな問題でなければ設計の詳細を把握しようとはしない。昔は、僕が若手と呼ばれていた頃はそうではなかった。上司は鬼厳しかった。

製品開発というものは発売日から逆算された試作・評価が決まっており、予定通りに事が進まないと大変なことになる。不備で工場が止まれば財務諸表にダイレクトに効いてくるし、決まった時期に出せなくなると業績の見通しを大きく修正することになる。ハードウェアの開発は関係する人や会社が関連するすそ野の広い仕事なので、ちょっとした日程調整だけでも精神を持っていかれる。

そんなわけでスケジュールにプッシュされると、大体の人は「しょうがないな」となる。だが鬼厳しかった上司は大体の人ではなかった。

金型を彫らないと間に合わないタイミングでも必ず内容を詳細まで把握しようとした。問題と解決策、検証した方法と結果、設計前後の図面。全てを読み込み、極まっていない箇所があれば承認依頼は差し戻され、図面は正論ではあるが現実に即しているのかと思うコメントで真っ赤になって返って。修正しても修正しても何回も何回も。日が変わろうとも。
その態度は僕みたいなへなちょこ相手だけでなく、折衝する部署・他社にも及んだ。理に合わないことをやろうとすると一本電話で「今すぐ止めろ」。厳しく、怖かった。

あの頃は納期と上司のプレッシャーに挟まれ少ない知識と経験でもがいていた。今はいまでファッキン設計仕事から抜け出せていないものの、何とも言えないゆるさを感じる。こんな雑で設計として良いのか、あの鬼厳しかった上司ならPCの電源引き抜いて落とすレベルだなと、ふと思う。すると、もうちょっと頑張れるだろという気持ちが沸いてくる。昔超えたハードルは後に自分を支える自信になるものだ。

僕は相変わらずボンクラで雑な仕事をしてしまいそうになる。だが今でも頭に浮かぶイマジナリー上司が克を入れてくる。良い上司だったかは別として、強烈な人ではあったな。