WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

尻拭いおじさんが救われる日は来るのか?

ハード開発の終わりは量産スタートじゃありません。製品のEOL(End Of Life)、量産が終わり最後の一台が破棄されるまでが開発です。量産スタートってのは道半ばなわけです。

しかし量産立ち上げに携わったメンバーの多くは、量産GOの後は散り散りになり、次のプロジェクトへアサインされます。その後の量産製品の面倒は誰が見るんでしょう?

製品は社内での評価を経ているとは言え、市場に出て初めてわかる故障モードや、量産途中でのアクシデントがつきものです。

僕が所属してきた部署では、そんな量産後の問題を決まって対応するおじさんがいました。人の設計の尻拭いを任されるおじさんは、必要かつ重要な立場なはずですが、あまりいい扱いを受けていませんでした。

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尻拭い業務の3つのO

正直言って量産対応の仕事はやりたくない仕事です。というのも、3つの点で恵まれてないんですよね。

1つ目は面白くないこと。
量産品という性質上、後から手を加えるにしても、大したことが出来ません。シートを貼ったり、リブをちょっと足してみたり。自分の設計でもないものに、少ない選択肢から改善を(大抵は周囲に急かされながら)求められるんですから、面白くなる要素が無いですよねー。

2つ目は、重いこと。
量産停止は決算数値が動く程のインパクトがあります。製造業は出荷して初めて売上が立ちますが、稼働日200日として1日止まると単純計算で売上が0.5%減りますね。だから、決して量産が止まらないように、部品在庫のコントロールや修正までのスケジュール調整を慎重に組む必要があります。そして、動かすのに必要なハンコの数が膨大で、中々動き出せないものです。(けど急かされる)

3つ目は美味しくないこと。
量産対応、評価されにくくて美味しくない仕事です。成果を評価する時って、売上Up貢献とか利益改善貢献とかをアピールしますよね。でも量産対応って、始まりからしてマイナスなわけです。「この問題を短期で解決しましたぜ!」って言っても、「まぁ、マイナスがゼロになっただけだね」で終わっちゃうわけです。

そんなわけで量産対応は報われない仕事なわけで。しかし、知識と経験が無いとこなせない仕事でもあるので、「おじさん」くらいの年齢の人がアサインされます。

尻拭いおじさんの必要性

重要な存在なんですよ、尻拭いおじさんは。

量産対応って、市場や製造のフィードバック、ノウハウが集まるところなんですよね。その情報をうまく吸い出せると、次の製品がより顧客の要望を満たすように改良できるわけです。

企業もそのあたりは認識していて、尻拭いおじさんにフィードバックの文書化をやらせたりしています。(これまた面倒くさい)啓蒙活動なんかも含めて。

重要な仕事をやってるんですよね。しかし評価されていない。そのあたりに、僕はモヤモヤを覚えてます。

目立っちゃうところに評価が集中しちゃうのはしょうがない部分もあるかと思いますが、地味かつ忍耐を要求するような仕事にも、もっと焦点を当ててみてはどうかと思うわけです。

まとめ

先日、シリコンバレーの平均勤続年数、なんてのをついったーで見かけました。大体の企業が1~2年くらいだったかな。それを見て、サービス作った後の運用とかどうしてるんだろ、って思ったんですよね。で、その疑問を自身の経験に当ててみると、尻拭いをしてくれているおじさんがいたわけです。

僕も割と異動周期が短いとこで働きもしましたが、そういう部署が成り立っているのはノウハウを持った数人のベテラン勢がいるから、なんですよね。彼らが知識を貸してくれ、また尻拭いをしてくれているおかげで、経験が浅い人達でも仕事が回せるわけです。

そういう積んできた人もきちんと評価されるようになるといいな、と感じる今日この頃です。