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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

特許出願のノルマなんて無駄

雑記

発明の補償に関する書類がきた

僕は転職者、前職の会社から出願中の発明どうするよ?という文書が届いた。そういえば何件か出願中の案件があった。在職し続けていれば権利化した後に会社への貢献度に応じた補償金が出たはず。で、文書を簡単に説明すると在職中と同じ扱いを受けるか、すぐに固定金を受け取るかを選択せよという内容だった。簡単だ、答えは決まりきっている。

 

僕の発明はしょぼい

僕の発明はしょぼい。大切な内容なので二度言う。皆さんは発明というとどんなものを思い浮かべるだろうか。研究の結果生み出される最新の技術、青色LED、金を巡る醜い闘争…だが大概の発明はそんな大したものではない。用途をかなり限定し、かろうじて新規性と進歩性をこじつけたもの。実用性はさておき、誰もだしていないからとりあえず出してみたもの。以前の発明からちょろっと改善点を付け足したもの。そういった大したことの無い発明を、僕は出願の前調査でたくさん見てきた。僕の発明もその例に漏れず対したものではない。内容としてはちょっとした工夫、料理における隠し味とかそういうレベルのもの。それでも少しは立派に見えるのはCADで打ち出した絵の見栄えと、日本語の魔術師・弁理士センセイの巧みな文章のおかげだ。特許の中身を読んだことがある人なら共感してもらえると思うが、特許の原稿は権利範囲を明確にするために恐ろしくクドい書き方をされている。西尾維新の小説でもクド過ぎて無理な僕は、権利範囲の確認をするだけでもノックダウンだ。そのクドさが特許に箔をつけていると言える。

 

こうして僕は特許出願しました

なんでそんなしょぼい発明が出願できたのか。僕が特許出願までこぎ着けるのに使ったのはクリエイティビティではない。特許出願をするには会社のいわゆる特許部の許可を得なければ行けなかった。特許出願は安くは無いお金がかかる。特許部の皆様の目は厳しい。新規性、進歩性、実現性、利益性...僕のクリエイティビティでは彼らを満足させるだけの発明は誕生しなかった。そこで僕が使ったのは熱意だ。

 

開発部たる我が部には特許出願ノルマが課されていた。何故か電気回路設計部門やソフト開発部門の数十倍のノルマが。必然的に新規開発機種ではいくつかの特許を出願することがマストとなる。部長は課長に、課長はチームリーダーに、チームリーダーはチームメンバーにノルマの堅守を言い渡す。ノルマの未達は評価に影響する。諭吉を人質にとられた僕は、ちょっと変わった構造をしているところを片っ端から発明としてぶち上げ、同じ内容の特許が無いことが確認できたものからドンドン特許部に持ち込んで行った。クソ発明の嵐に荒れ狂う特許部、×判定で帰ってくるクソ発明たち、×になったものは、それぞれを組み合わせて、またリターン。そうした不毛なラリーを繰り返すうちに非常に限定的かつ無駄に内容が多い、特濃のクソ発明が出来上がっていく。最後は特許部の会議に殴り込みをかけて「製品発表されれば出願できない」「特許部にも出願目標数があるのでは…?」などとアドバイスを行い、最後にちょっと上司の方からお話をしてもらうことで出願までこぎ着けたのだった。

 

そんなわけで

そういう熱意のみで通した発明が、会社に貢献するものになるとは思えない。権利化するかどうかすら、怪しい。というわけで早めにお金をもらっておこう。それが僕の判断。会社として、技術力の証明のために特許数を稼ぐ戦略をとっている所は大手でもあると思うけど、労力・金・時間をかけていらない権利を生み出す苗床になるだけなので、僕はやめた方がいいんじゃないかなと思っている。ちなみに上記エピソードの発明は実際に製品に使われているだけマシで、頭の中だけで出来上がるアイデア発明はさらに悲惨な内容なのだが、またそれは別の機会に。