オマハの賢人ウォーレン・バフェット氏は投資に手を出している人なら誰もが知っている存在でしょう。バフェット氏には長年のパートナーがいます。それが本著で取り上げられているチャーリー・マンガー氏です。
バフェット関連の本を読めば必ず名前が出てくるマンガー氏ですが、マンガー氏自身にフィーチャーした本はそう多くありません。マンガー氏とバフェット氏は互いに刺激し合う関係であり、二人が会長・副会長を務めるバークシャー・ハザウェイの今の姿はどちらが欠けても無かったでしょう。
本著は、そんなバフェット氏の右腕”以上”であるマンガー氏のコメントを取り上げ、そこに解説を挟んでいく構成となっています。
どんな人にオススメか
・投資を始めようと言う人
・バフェット氏が好きな人
・狂乱の相場で失った正気を取り戻したい人
本著は長期投資を行う上でのマインドを学ぶ事が出来ます。
マンガー氏の投資理念はバフェット氏と似通っています。偉大な会社を適切な値段で買い、ずっと保有しておくということです。その最たる例として、コカ・コーラの話が頻繁に登場します。バフェット本を読み慣れた人にとっては、おなじみな内容ですね。
コメントはユーモアがあり面白い
選りすぐりのコメントだけに、ユーモアがありながら含蓄に富んだ物が揃っています。世の中の物事を痛烈に皮肉ったものもあれば、自身の体験談もあります。コメントの随所に、マンガー氏の思想を形作ってきたイベント(大恐慌など)に触れていて、ちょっとした追体験をしている気分になります。
失敗談にも触れていて、そこから得た教訓を惜しみなく伝えてくれるあたりに、マンガー氏の誠実さを感じました。
コメントの内容は投資だけに留まらず、もっと大きな経済だったりビジネスだったり、そして人生にまで言及されています。90歳を越えてなお現役である氏の言葉は、投資の視点でないものも興味深いです。
以下、印象に残っていることに軽く触れてみます。
分散投資より集中投資
平凡から抜け出すこと、すなわち素晴らしい会社だけに集中して投資することが投資で成功する考え方の1つだという、氏の思想が本著から見えてきます。
分散投資は清濁併せ持つ性質があり、大負けはないけれど大勝ちも無いという手法です。
皆が皆、マンガー氏やバフェット氏のように素晴らしい会社を見抜けるわけではないし、市場の誘惑に打ち勝つ忍耐を持ち合わせているわけではありません。
ですが、やはり素晴らしい会社を見つけられるよう努力すること、握力を強くするよう意識する事は有意義です。人間は成長するものなので、失敗から学んで行けば、賢者とまではいかずとも、平均を上回れるようにはなるかもしれませんね。
読書の重要性
読書について触れているコメントもありました。
バフェット氏もマンガー氏も貪欲な読書家とあります。学び続けていくことで年齢関係なく成長出来ることは、これからどんどん歳をとっていく僕にとっても救いであります。
絶えず多方面の知識を得て知見を広げる事や、勉強し続けることの重要性…忙しくなるとついつい勉強が疎かになりがちですが、そんな時の教訓としたいものです。
本著の2つの難点
基本的に読みやすくて面白い本です。
あえて難点を挙げるとすれば、下記2点ですね。
・「良い会社」を見つける具体的な方法論に乏しい
・(バフェット本を読んでいる人に取って)目新しい発見が無い
前者について。偉大な会社の株を長期で保有する事の利点を繰り返し述べていますが、良い会社を探すためにどうあるべきか、という方法論を具体的に提示してくれているわけではありません。もっとも、そこまでカバーしてくれというのは酷な話でしょう。
投資は自己責任です。自身の強い領域で勝負し、リスクを取って頭を使い続ける事で会社を見分ける力を鍛えていくしかないんでしょうね。
後者について、バフェット氏と長年のパートナーだけあり、その投資思想は似通っています。見覚えのあるフレーズが多いな、と感じるのは気のせいではないでしょう。
新しい知見を積極的に取り入れたい人にとっては、ちょっと退屈に感じるかもしれません。バフェット氏の思想や、長期保有のための理屈を肉付けしたい人にとってこそ、この本は価値あるものかと思います。
こんな記事も書いています。
読み物としてはこちらの方が生々しくて面白いです。
具体的に企業価値を算出したいときは、この本が役立つでしょう。