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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

マグネシウム合金の時代はくるのか

<まとめ>

・日経ビジネスにて自動車のマグネシウム合金(以下マグネ)の利用が進みつつあることを目にした

・マグネは実用化されて久しいけど耐食性や成形面で難があったが、着々と課題が解決されているようだ

・コストが下がるか軽量への圧力が強まれば大衆車でもアルミからマグネへの移行が一挙に進むかもしれない

 自動車への採用が本格化なるか

日経ビジネスで自動車向けマグネシウム部材が特集されていた。自動車のエコへの圧力が増していく中、業界は一層の軽量化をすすめるためにアルミを主要部材として使う車種が出てきている。そして更なる軽量化にとマグネシウム合金が期待されているとのことだ。何年か毎にこの種のネタを見ているような気がするが、昨年出たポルシェのスポーツカーでルーフ部分にマグネの板材がつかわれるなど量産品で実用化されており、かつての期待を取り戻す活躍をするかもしれない。ところでマグネってアルミや他の金属と比べて何がいいのだろうか。

マグネシウム合金の利点欠点

僕が設計する上で考えるマグネの利点欠点をざっくり挙げると下記の通り。

●利点

・軽くて強い

・切削性が良い

●欠点

・耐食性が低い

・コストが高い

・粉塵が良く燃え、爆発する

・割れるように破断する

 

ちょいと掘り下げてみてみよう。そもそもマグネって何がいいの?っていうと、軽くて強いところだね。住友電工(5802)から物性値の表を引用させてもらったものが下記の表である。重量あたりの引っ張り強さを示す比強度を見ると、AZ91鋳造品でも5000番台アルミより高い比強度を有している。さすがにA2024(超ジュラルミン)には鋳造品だと歯が立たないが、AZ91板材はA2024すら比強度では凌駕している。A2024が鋼材レベルの引張強度を有しており、航空宇宙機材などに使われるものだと考えると中々の健闘ぶりと言える。しかし板材凄いな、はじめて物性見たけれど耐力も高い。鋳造とは別物だね。

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(引用元:住友電気工業株式会社 | マグネシウム合金AZ91 Mg合金AZ91とは

 そんな軽くて強いマグネだけれど、一般的に使われてはいるけれどアルミに比べるとまだまだ多く使われているとは言えない。それはもちろん、前述の欠点によるものだ。

自動車、それも外装に用いられるとなると常に外部からの環境ストレスー雨や高温低温、日射などーにさらされる。しかしマグネは耐食性が低く、だからこそ化成処理を行い腐食に対する信頼性を高めてから使うのだけれど、自動車で最も厳しい条件にさらされる外装に使うには実力が足りなかったのだろう。マグネをルーフに用いた車が話題になったのはそういった背景があるからだ。とはいえ耐食性を上げるための化成処理に大枚をはたいているようで、まだまだ大衆車に搭載できるものではないらしいが。

それでも昔に比べて耐食性を向上させる技術も発展しているようだし、住金のAZ91板材のように実用に耐えるレベルの板材も登場している。この調子で改良が進んでいけば大衆車に使用できるものが出来てくる可能性は十分にあり得る。

軽量化への圧力は増し続ける

今世紀は環境への配慮がかつて無いほど叫ばれる世紀だなと僕は感じている。それだけ人類に余裕ができたのかもしれない。*1とはいえモノを動かすには仕事量が必要になるわけで、その仕事量を減らすためにはモノ自体の軽量化は避けて通れない。だから今後もモノ、特に動くモノについては軽量化の圧力が増してくると思うんだよね。そんなわけで将来的には鋼材からさらに軽量な金属であるマグネ、もしくはカーボンなどに移行する時期はやってくると思うんだよね。*2マグネは今でもPCとかタブレットなどの小さい電化製品でよく使われているけれど、1つ1つに使われている材料量は大した事無い。自動車1台あたりに使われ材料量に比べると微々たるものだろう。そう考えるとマグネ関係の会社の将来というのは中々に楽しみなものかもしれない。

PS)僕はマグネがコワイ

ただ個人的にはマグネは燃えるのが怖い。僕はチクソモールディングの知見しか持ち合わせていないが、成形品を磨く工程では特別な集塵機を用いるなど粉塵による事故には細心の注意が必要だ。僕が直接磨くわけじゃないんだけれど、試作をちょっと手加工したり立会いにいったりするとビビっちゃうんだよね...…。製造がしっかり管理できていれば特段問題になるほどの欠点じゃないとは思うけれど。

*1:僕の生活に余裕はないんだけど。

*2:カーボンは形状作るの難しいだろうしコストもバカ高いので大衆車にはまだハードル高すぎると僕は思っている。