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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

ものづくりは進歩していない

働いている時に、ふと、「ものづくりは進歩してない」と考えてしまいました。

僕は設計者、今日もCADを立ち上げて、電子の世界で形状を作り込んでいきます。順調に形状を作っているのも束の間、ふと手が止まります。部品同士の隙間関係をどうするべきか…設計者にとって頻繁に出くわす、悩ましい問いです。部品のバラツキ、組立のバラツキ…。結局はそれら0.1mmやそれ以下の数値を積み上げたり二乗平均を取ったりして、最終的な判断を下します。

このバラツキ、±0.1mm…頑張ったとして±0.05mm程度が普通に製造する分では限界です。これは僕が設計を業として行い始めてから数年、全く変わらない数値です。一度会社を移っても、バラツキに対する感覚に違いはありませんでした。どこの会社、さらに言うと国でも、こんなものなんでしょう。

コンピュータは飛躍的に計算速度を増しています。(今やスマホのCPUですら4コアが珍しくありません。)単眼カメラは撮像技術の向上により深度を取得することも出来ます。(元々は深度のためには複眼が必要でした。)失った手の変わりに義手を意志で動かす事も今では可能です。何が言いたいかというと、科学技術の進歩はめざましいということです。

そんななかでモノづくりです。前述の通り、精度と言う点においては長きに渡り進歩が感じられません。アップルは部品毎のバラツキを計測し、相性のいいバラツキ方をした部品を組み合わせる事で隙間の無い製品を作り上げています。レクサスのネジは、小ロット毎に製品検査を行い、金型の軽微な疲労も早期に発見するシステムを組む事で、品質のよいネジだけを使用することを可能としています。どちらも品性のための素晴らしい企業努力が見えます。ただしこれらは検査や部品供給手法の改善により達成されたものであり、製造の進歩による恩恵を授かったわけではありません。「バラツキは(今までと同程度に)あるもの」という発想の元、そのバラツキをうまく対処した例と言えます。

加工限界についてももの申したくあります。成形をするためには肉厚がいくつ必要だとか、板金にプレスで穴をあけるためには曲げ部からいくつ離さないといけないだとか、そういった加工上での限界についてです。こちらも今の所、進歩を感じさせるものはありません。

新しく実用に近づいてきた技術も、あるにはあります。ちょっと前に流行った3Dプリンタがそれです。型を必要とせず切削で加工していくわけでもない3Dプリンタは、ちょっとしたプロトタイピングを行うには便利な存在です。ひと昔前のものでは造形品の形状再現度はイマイチな上にボロボロですぐ崩れ落ちる、ナウシカの巨神兵のようなものでした。現代のものは多少の組み立て確認にも耐える程度の強度は有していますし、形状の再現度も高いです。ただこれの使いどころは少量多品種の物であり、そもそも精度的には切削や型物に及びません。

つらつら書いてきましたが、言いたい事は一貫して1つ、「ものづくりってホント進歩しないよな」という愚痴です。精度が例えば、0.001mmまで普通に保証されるようになれば…とは常々思います。そうなった場合、設計という業務の難易度が格段に下がり専門性が消失するかもしれませんし、進歩した精度が常識と化して今と同じように苦しみながら設計する羽目になるかもしれません。けど、それでもいいんです。なんといいますか、自分の職務範囲でも、何だか大きな技術進歩の波が来てるんだぜ、って言ってみたいんです。

ネットワークやらソフトウェアの世界の人達が、次々に新しいものを楽しそうに紹介しているのを見て、羨ましくなっちゃったのかもしれませんね。

こんな記事も書いています。 

temcee.hatenablog.com

結局現地に飛んで設計者がゴリゴリ見ていくしかないんですかねぇ。