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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

遠い地の工場において文書は無力だ

先日、東南アジアの工場と仕事してる設計の方と話す機会がありました。僕は日本と中国しか製造経験の無いので、その国ならではの面白いお話を聞けて勉強になりました。海外と一言で言っても、それぞれお国柄、文化が違うので、仕事の仕方も変わってきますね。

その一方で同じような問題を抱えてたりもします。こちらの指示を無視して連絡せず好き勝手やられる、というところです。遠い地でものが作られているということは監視の目が届かないということです。

もちろん上記のような問題に対して、図面や手順書などの文書で取り決めはされています。しかし現場の作業者が遵守しなければ効力を発揮しません。違約金などは取れるでしょうが、設計などの開発職のミッションはきちんと物を作ることです。

僕らの工数削減は遠い地で汗を流す工業作業者の質の向上次第なところがあります…が、実際に見聞、体験してきたことを考えると、その道のりは険しいと言えます。

手順書通り作業されない

最近では設計データのやり取りは3DCADがメインですが、重要な検査だったり組立の手順だったりするものは図面など、紙に印刷できる2次元のデータでやり取りがなされています。これらに記載されていることは何れも最終製品の品質を決めるキモとも言える事項です。例えば製品の隙間を均一にするために部品同士を寄せながら組む事や、部品の動作を潤滑にするための潤滑剤の塗布指示です。
こうした指示は僕たち設計者から製造側の仲介、営業さんだったり製造技術者だったり、を通して現場作業員へ行き渡るはずですが、往々にしてこれらの作業がなされない事による問題が起こります。部品を寄せずに組み上げることで隙間だらけで品位の無い製品になったり、潤滑剤を適当に塗った振りをしていて動きが重く引っかかりのある製品になったり。これらの問題は、発覚当初だと部品問題と見分けがつかないため、往々にして設計者が現地に飛んで部品や製造工程などを逐一チェックして原因を調査することになります。現地作業員のちょっとしたサボりが多大な工数を取られる障害へと発展するわけです。
こういったサボり行為は文書では制限できない事であり、防ぐためには複数工程でチェックを行い早期に問題を発見したり、治具(ジグ)と呼ばれる、作業を補助する設備を整える必要があります。ちなみにですが、海外の作業者のこういったサボリ行為には「仕事をクビになっても、どうせすぐ別のところで働ける」という意識があるのかなと、僕は思ってます。

設備の損耗を無視する

形あるものは壊れます。壊れたものは取り替えなければなりませんが、海外ではだましだましの改修で乗り切ろうとされる事があります。
プラスチック部品は金型と呼ばれる金属の型に解けた樹脂を流し込んで作ります。金型は製造目標台数に応じて適切な素材で造られますが、製品寿命が長くなったり想定以上の台数が流れたりして数十万という部品の生産に使われると、当然ですが損耗します。
損耗した金型を使い続けると微小な隙間に樹脂が流れて鋭いバリができたり、寸法が安定しなくなったり、そもそも形状が出来たりします。だから部品の品質が落ちてきた時点で金型を作り替える相談はあってしかるべきです。もちろんですが、金型は製造を委託している側の資産であるため、作り替え費用も僕たち設計をしている側が負担します。
それなのに連絡無く、損耗した金型で部品を造り続けられてしまうことが、過去にありました。僕は直接立ち会っていませんが製造現場ではテープで補修された金型が見つかったそうです。笑い話にもありません。費用負担は無いとはいえプラスチック部品のメーカーは金型ではなく部品を造る事で利益を得ます。新しい金型の作成に工数をかけるのを嫌ったのかもしれません。

4M変更に対する連絡が無い

人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)。頭文字をとって4Mです。
これらは機械加工による生産の4要素として知られ、工程内で生じるたいていの問題はこのどこかに原因があります。だからこそこれら4Mの変更点は慎重に管理していく必要があります。
しかしこれらが唐突に、連絡無く変わっていることが遠い海外の地では良くあります。
塗装が剥がれたと思ったら設備と条件が変わっていたり。不良率が突然増えたと思ったら作業者が変わり、まったくトレーニングされていない状態で工程にいたり。きついです。

文書での取り決めはあるけれど 

上記の問題はハードウェアの開発に関わるひとなら大なり小なり誰もが経験することではないかと思います。そして繰り返しに成りますが、問題を避けるために口約束などではない、正式な取り決めが、双方合意した形の文書として存在します。ですが、現実問題として文書を無視した作業不良による障害は後を絶ちません。そしてそのために設計者は飛び回る羽目に成ります。

こういうところ、なんとかスマートにいかないかなーと思う今日この頃です。

 

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com

 中国と日本の工場の違う所について書いたものです。中国の作業者は書いた事はやらず、現地で言ったことしかやってくれませんw