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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

警備員さんが機械化してて悲しい

「オハヨウゴザイマス」

「オハヨウゴザイマス」

 

陰鬱な平日の朝、多くの社員が仕事をするためにセキュリティゲートをくぐっていくエントランスに警備員さんの声がコダマする。挨拶を返す人の少なさは関東特有なのかそれとも疲労・ストレスが溜まっているからなのか、ともかく警備員さんは表情ひとつ変えず通り過ぎる人たちに一方通行の挨拶を繰り返す。虚空をさまようその瞳は何を思っているのか、僕には分からない。しかし茫然自失な様子はかつて僕がスッタンに振り込んだ時のソレと同じじゃないか。他人事ではない…ほっとくわけにはいかない。

 

「おはようございます」

「オハヨウゴザイマス」

 

「オハヨーっす」

「オハヨウゴザイマス」

 

「オハヨーオハヨー」

「オハヨウゴザイマス」

幾多のパターンを試したものの警備員さんの心には響かなかった。なんなら周りの人たちの冷めた視線が僕に突き刺さっているように見えたが、それはただのネガティブ思考…自意識過剰だ。普通の会社員は出勤時に他人のことを考える余裕なんてないはずだ。

 

朝という時間帯が良くなかったのかも知る無い。尻上がりに調子を上げていくタイプかもしれないし、長い業務に耐えるために序盤は流しているかもしれない。僕も長距離走る時は後からペースを上げていく方だ、その心理はわかる。それに朝のラッシュは人が多すぎて、ぶっちゃけ僕の挨拶がかき消されている可能性もある。というわけで時間を変えて退社時はどうか。業務終了間際で気も緩み、なんらか人間らしい反応が得られるかもしれない。

「お疲れ様です」

「オツカレサマデシタ」

 

「いつもご苦労さまです」

「オツカレサマデシタ」

やはり定型文しか出てこない。時既に遅しなのか。数多くの人の波を捌くには正気では能わず、感情や雑念その他の人間らしい機能をシャットアウトさせなければならなかったのだろう。僕は現代社会の深い闇を感じずにはいられなかった。もはや僕に出来る事は何も無い。

 

そんなわけで僕もいつしか、出勤時は彼に対して機械的に挨拶を返すだけのオハヨウゴザイマスロボになってしまった。無念…諦めてしまうのは無念…。まるでパワポケのバッドエンドのような悪夢、いつか警備員さんが人間の心を取り戻すことを願いつつ、僕はセキュリティゲートをくぐり続ける。