シャープが翻弄されている。
まだ出資が実現していない段階だけど、既に主導権は鴻海(ホンハイ)に握られているようだ。鴻海は出資に際して従業員の首を担保したが、出資前にシャープが勝手にやる分には問題ない。本社の移転など諸々のコストカットを次々と打ち出されているらしい。同様のことは先週のダイヤモンドにも書かれていた。
まだ出資が実現していないこの段階では鴻海側が経営に口出しする権利は無いだろうけど、シャープ側が鴻海の要求を断るのは難しいだろう。出資話がご破産になった時、鴻海はシャープの液晶事業を手に入れることが出来る。IGZOが今後どのくらいの利益をもたらすかは未知数だけど、鴻海のシャープ出資のモチベーションであることは上記の条項を定めていることからも明らかだ。そしてシャープが他社と差別化できているものは傷だらけのシャープブランドを除けばIGZOくらいしか無いのではと思う。まぁディスプレイビジネスも現状は結構な赤字だしてて、まともに商売成り立ってるのはB to Bビジネスくらいなんだけど。
そんなわけでシャープは鴻海の提案を無下に断れない。このような事態に陥ったのは単純で、シャープにお金がないから。交渉力・技術力、そんなものは元手が無い状態では何の役にも立たない。鴻海と産業革新機構が競ってた頃はシャープに主導権があるように思われていたが、結局のところは株主や銀行などお金の出所の意向に押される形であったし、そもそも債務超過で出資が無ければ立ち行かない状態では出資元が決まった段階で主導権を完全に失うのは当たり前の結論である。鴻海ほどえげつない手段は講じなかったろうけど、産業革新機構が勝っていてもシャープはなされるがままだっただろう。
シャープの今の境遇はお金の強さを教えてくれる。個人においても、もちろんお金は重要だ。僕みたいな一般人はお金がないから労働に縛られているし、いざというときのために十分な資産がないから保険や年金などの余分な費用が発生している。家を買うとしてもローンを組まねばならない。もうちょっとレベルが落ちて貯金が無い人になると突発的な出費で借金が発生、金利を余計に払うハメになるだろう。これらはすべて潤沢な資産が無いことで選択肢を失っている例のほんの一部だ。
どんなに優れたギャンブラーでも手札が無ければ勝てない。お金があれば取れる選択肢が増える。それこそが主導権だ。自分の人生をある程度自分でコントロールするためにも、自由に使えるお金をある程度手元に置いておかねばならない。シャープはその目の付け所の鋭さで、最期に僕たちへ大きな知見を残してくれたのかもしれない。