WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

アップルにはあんましラインナップ増やしてほしくないんよね

うーん。

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 小さい端末を待っているiPhoneユーザーがたくさんいるのは分かる。Androidユーザーにそういう人がたくさんいるから。だからiPhone SEは売れると思うし、ビジネスとしても間違いじゃないんだろうなと思うんだけど、個人的にはアップルにはラインナップを増やす方向に舵を切ってほしくない、という思いがある。それが大衆受けする低価格帯となれば、なおさら。

 

僕はandroidユーザー、国内初代XperiaであるX10から始まりArc、GalaxyNexus、A、Z5とandroidとXperiaと共にこの厳しい世の中を生きてきている。そんな僕はiPhoneユーザーのドヤリングに悩まされてきた。特にX10の時代はandroidが発展途上だったこともあり煽りに煽られた。まだiPhone以外で消耗してるの?クッソー。あまりネガティブな言葉を使いたくないので直接的な言葉は使わないけど、心無いマカーにさらされた僕の苦悩を感じていただければ、僕がアップル社に対してどういった思いを抱いているか理解してもらえると思う。

 

そんな僕でもアップル社の製品の凄さは分かる。デザイン?UI?そこらへんはどうでもいい。アップルの凄さは製造力だと僕は思っている。アップル製品をバラした経験は何度かある。部品同士の隙間の狭さや分割面の段差の無さは部品製造技術の高さと組立精度の高さを感じさせ、塗装の質の高さや製品としての剛性感は設計者だけでなく製造から検査、受け入れまで、関わる人すべての意識の高さを感じさせる。アップルはファブレス、工場を持っていないというのは有名な話だが、よほど製造に長けた人が入念にメーカーを指導しているんだろう。日本のメーカーでここまでのモノを大量に製造できるところは、贔屓目に見てもない。設備に金をかけているのは確かだろうけど、それだけではあの完成度の高い製品は作れない。最新の設備と、それを使いこなす技術・ノウハウ、そして製造の末端にまで品質感覚とプロ意識が浸透していることで成り立っているんだろう。

 

こういった製品から見えるのはアップルの妥協を許さない姿勢。関連する各社も中にいる人も大変だと思うけど、ラインナップが少ないうちは混乱もなく意識を各製品に集中することができただろう。しかしラインナップが増えたらどうだ?設備は使いまわすことができるかもしれない、ラインナップに合わせれば作業員も増やすことができるかもしれない。しかしその意識を、技術指導ができる人材は足りているのだろうか。末端にまで製品に意識を持たせることができるだろうか。それが出来なくなったとき、アップルの製品はどうなるだろうか。

 

売れる市場があれば売り込んでいくのはビジネスとしては正しい。しかしながらアップルの妥協を許さぬモノつくりは大衆向けの低価格とは交わらない。androidの中華スマホの価格には到底及ばないだろう。スマホの性能自体は既に一般ユーズに対しては充分なものになってきているし、スマホに格別な興味を持たない層はそのうち安い方にシフトしていくんじゃないかなと思う。PCもそうだったし。

 

アップルの強みは一般大衆向けというより、ガジェ好きやクリエイターなどの一部の尖った人達だ。だからアップルは大衆が喜ぶ製品を目指して欲しい。変にシェアを拡大しようとして色々な方向を見ていると、気が付けば大切な強みが無くなってしまう…なんてことになるかもしれないからね。