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WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

クリエイティブになりたい

僕は機械設計者、しかし製品の見た目をデザインしているのではなく、デザイナーと称される方々だ。彼らはスタイリッシュな事務所を構え、スタバで買ったカロリーの高そうな飲み物を飲みながらMACで新しい製品をクリエイトする。それに反して僕はというと、コストダウンで見晴らしの良くなった事務所で、マックで買ったコーヒーを飲みながら、現物確認やら工場とのやり取りやらで苦労、クリエイティブな業務は大体が設計しているときだけだ。くっそーずっとクリエイティブで羨ましい。これも彼らのクリエイティビティの高さがなせる仕事なのだからしょうがない。

デザイナーは信念を持って行動している。神は細部に宿るというが、普通の人だと気が付かないところまで恐ろしいこだわりを見せるのがデザイナーだ。彼らは曲線が大好き、そのなめらかな形状を隙あらば使用したい彼らは、直線で済むところも天文学的な半径の円弧で表現する。クリエイティビティの無い僕は、設計や実測時の合理化を考えて設計データを作る段階で曲線から直線に変えるのだが、バレるたびにクリエイティブな罵詈雑言を浴びせてくるのだ。しかしこれは僕が悪い、クリエイティビティの欠如、審美眼不足、センス×。加えて記憶力にも乏しい僕は時に修正を忘れてそのままモノを作ってしまうこともあったが、現物として出来上がったモノに対してはデザイナーが文句を言うことはない。これは決してモノが直線であることに彼らが気づいていないわけではなく、僕に気を使っているからだ。ちなみに下記2つの四角形っぽいもののどこかの辺が曲線になっている。これに気が付けなければデザイナーにはなれない。

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彼らはもちろん色にもこだわる。彼らがこれと決めた色、それは神様とも呼ばれる。ちなみに開発にとっては仕様書も神様であり、ついでに上司も神様、お客様も神様、この世界は多神教だ。閑話休題。PC上の色はコードを弄れば確実に変わるが、塗装の色は中身の成分の配合比率や撹拌具合で絶妙に変わってくる。それを生産コストに合う範囲で多少の幅を持たせるようにするのが僕たち機械設計者。しかしデザイナーの目は誤魔化せない。たとえ同じ塗料、同じ下地を使っていても機種が変われば彼らの鋭い視線はその色差を射ぬく。色差計で定量的な調査結果を提出すると手のひらを返すが、これは彼らがとりあえず文句を言いたいのではなく、いついかなるときにも製品を厳しい目でみなくてはならないという警鐘を鳴らしているのだ。

最後に、彼らは自由だ。設計である僕は製品を出荷まで見送る責任がある。しかしデザイナーの仕事は絵を提出した時にあらかた終わる。常に新しいものに興味を持つ彼らは、過去を振り返らない。デザインデータを最終修正してしまえば、その瞬間から過去の思い出となり新しいモノの構想に、思考が移ってしまう。クリエイティビティの塊たる彼らはあふれ出るアウトプットを放出しなければ頭がおかしくなってしまうのか、さながら呼吸のために泳ぎ続けるマグロのようだ。その割に出てくるアウトプットはどこかで見たようなデザインが多いが、極めて自由な発想から生まれたものだ。パクリではなく偶然の産物だろう。今日も彼らの絵を3次元のモノに変えるため、僕ら設計者は働き続ける。