WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

家族と仕事と、理想と現実と

この度の人事で製品開発の最前線から1歩退くことになった。先のプロジェクトが中止に終わり、次こそは…と誓った矢先のことだ。正直いって、ショックは大きい。

上司から説明された異動の意図としては、異動先の部署に若手(という年でもないが)を入れて若返りをさせたかったこと、そして何より今の僕の家庭事情…療養中の嫁さんのフォローができるよう、働き方の融通が効く部署に…とのことだった。

1ヶ月の入院生活を終え、日常に戻り徐々に回復してきてはいるものの、嫁さんは未だ万全じゃあない。僕は仕事より家庭を優先し、有給を多用したし、出社しても定時帰りに努めた。溢れるタスクは上司や同僚を頼った。本当に感謝している。

製品開発という仕事は融通が効かない。部品メーカーから販売会社まで、関係者が多いためスケジュールの柔軟性が低く、開発中に何かしら問題が起きた時はあらゆるリソースを使って期間内に解決することになる。あらゆるリソースの中に残業や休日出勤による労働時間の追加が含まれてるのは、言うまでもない。出張も多い。海外に製造を依頼してる部品については、現地まで飛んで見に行くことも珍しくない。問題が重ければ数週間、家を空けることもある。

今の僕にこの開発業務が務まるか。出来なくは無いだろう、ただし公私ともに順調に事が進めばの話だ。どこか1つギアが狂えば何かを失うだろう。それは家族の絆かもしれないし僕の健康かもしれないし、会社での信頼かもしれない。そう考えると、今回の人事は僕にとっては悪い話ではない。ここまで家庭の事情を汲んだ人事をしてくれる会社は、日本では恵まれた部類だとも思う。

だけど、やっぱり僕は開発にいたかった。開発は大変な分、スキルが付き、評価されやすく、対外向けにも実績として分かりやすい。仕事が実際に形を持って世に流通するのだ。今の部署でメインストリーム系の設計にアサインされたのが、去年の春だった。転職して2年、他人のサポートや、メインストリームではないアクセサリ設計が主だった僕にようやく巡ってきた好機だった。結局、何も作りきれずに退場になるのはくやしいなぁ、くやしいよ。大した実績を築けずに時が流れていくことへ焦りはつのるが、それでも自分のリソースを仕事に振り分けられない。

家族をしっかり支えたい、しかし仕事も前線で頑張りたい。いまの僕には両方をこなせる手段が無い。働き方改革で会社も変わってきているが、個々人の理想に応える柔軟な体制にはほど遠い。仕様の並列検討を減らして開発工数が減ってくれれば。海外出張をせずとも、日本でのチェックで対応出来るだけのスケジュール感で開発ができれば。(前職ではASSY工場のみの立会いで回せていたので、不可能ではないはず)理想と現実とのギャップと、自分がコントロール出来る事の狭さに絶望すら感じる。

それでも希望はある。嫁さんは少しずつ、でも着実に回復している。子供もスプーンで食事出来るようになった。凄い早さで、出来る事が増えている。会社だって、家庭の事情を理解してくれるようになった。いつかは話に聞く欧米のように、よりフレキシブルな働き方が出来るようになるんじゃないかと思う。僕だけが拗ねて歩みを止めるわけにはいかない。次の業務が何であれ、そこには面白みがあれば勉強になる事もあるはずだ。僕のキャリアは途切れない。

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