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上場延期になった自動運転の大本命ZMP!業績はどんなものだったか?

12月には自動運転のベンチャー企業ZMPが上場します。*1普段IPO(新規公開株)にそっぽを向いている僕も名前は知っている程に有名で、幾度となく上場の噂が囁かれてきた、投資家たちが待望していた銘柄です。僕の知り合いやいつも拝見させて貰っているブロガーの方も、このIPOの抽選に申し込む人が見受けられます。

そんなZMPですが、今まで非上場だっただけに詳細な業績が不明でした。しかし上場に向けて日本証券取引所のHPにて有価証券報告書(以下、有報)が公開されてました。ミーハーかも知れませんが興味が湧いたので、その中身を少し、覗いてみるとしましょう。

※以下の内容はあくまで個人の見解を述べたもので売買を推奨するものではありません。投資を行う際は自己の責任において判断するようお願いします。

業績について 

ZMPの経営指標推移

 (引用元:新規上場会社情報 | 日本取引所グループ)

過去五年間の業績です。売上は年々上がっていってますが利益についてはマチマチで、直近の15期は赤字を計上しており最終損失は6千万ほどです。有報の79pに27年度の損益計算書がありましたが、粗利は伸びているものの販管費及び一般管理費が増大している分でマイナスとなっているようです。これについては先行投資ということですかね。実際に従業員数も増えてますし。ちなみに28年度3Qの時点でも営業利益は1億程度の赤字です。

キャッシュフローを見ると、営業CFと桁違いの投資・財務CFを誇っています。財務のCFは26,7年度ともに株式発行による資金調達であり、借入はほぼ無いようです。投資活動についてはDeNAと協業のロボットタクシー株式会社、ソニーモバイルコミュニケーションズと協業のエアロセンス株式会社、あとは子会社ZEG株式会社の設立・取得によるものです。従業員数や会社の規模の割に幅広く提携して動いているんだな、という印象を受けます。ただ株式発行はそう何度も出来るものではないし営業によるキャッシュが少なく(というかマイナス)、協業の会社もどちらかというと研究がメインですぐにキャッシュを産むようなビジネスではなさそうな点が気になります。

直近が赤字決算なのでPERは算出できませんが、仮条件の1,040円と過去5年で最も利益が出た13期でPERを求めてみると200倍少々といったところです。高いですね、日経平均のPERが20倍に届かないレベルだったと思うので、いかに注目を集めているかを思わされます。ベンチャー企業ですし、ターゲットとしている自動運転のマーケットもこれからだということでこうした指標に頼って買うのではなく今後の成長に期待して買うというのがこの銘柄に手を出すモチベーションでしょうね。

事業内容について

 自動運転と言っても正直何をやってるか良く知りませんでした。自動運転といってもセンサーだとかアルゴリズムだとか研究開発支援だとか、その範囲は広いです。有報に事業分野別の概要が載っていたので、どんなことをやっているのか確認してみました。

自動運転プラットフォーム及びセンサ・システム

自動運転開発のためのミニチュア車両など実験車や、画像認識・情報処理・走行制御を利用したモジュールの販売を行っています。実験車は自動運転に必要なセンサを買ってきて、組立とソフトの組み込みを行っているんでしょうかね。モジュールの方は、見た感じハードウェア部分は業務提携している会社から調達しているんでしょう。暗いところでも高感度に画像を取得できるのはα7SⅡでその実力を見せてくれたソニー製イメージセンサーによるものだし、コンピュータのハード的な核であるCPUはインテル製です。ということは開発としてはソフトに主軸を置いてるんですかね。

 実写実験走行サービス

これは評価の代行サービスですね。評価とデータ取りについては作法さえ学べば誰でも出来ることであり、スキルを持つ開発者に行わせる事はリソースの無駄かと思うので、こういった代行サービスは悪く無いのかなとは思います。色々な地域や会社で仕事を貰っているようで、そのデータが今後生きてくるかもしれません。ただ開発という仕事をしている僕の目線でいうと、外注に出す評価は技術の核に関連するようなものは無いだろうし、代行側で色々とデータ取りの支援をしてもらわなくても人だけ出してもらって要求しているデータだけ出してくれれば良いかなとも感じます。あんまり一括してやられると社内にノウハウがたまらないので、それはそれで良く無いんですよね。

カスタマイズ&インキュベーション

既存の車両を改造して自動運転開発の実験車両にするサービスのようです。原理的な試作を見るなら前述のミニチュア実験車でもいいかもしれませんが、実際の利用ケースを意識した実験を行うには実車両でないとダメでしょう。そんなわけで既存車種を実験車に改造するのはあまり手間がかからずいいのかもしれません。前述の協業会社、ロボットタクシーとかエアロセンスとかもここに関連してるとのことです。

キャリロ

自動台車、と考えれば良いんでしょうか。自動追尾やコントローラー操作可能な台車のようです。実際の工場は結構前から(色テープを追随するだけみたいな原始的な)自動台車がいたりするんですが、それらにとって代わる事が出来るかというと、うーん考えものです。応用の幅は広いかもしれませんが、そもそも工場は効率を追求していて台車の経路などは応用する必要がなかったりします。コスト面で原始的な自動台車に勝っているならいいんでしょうけど、こればっかりは当事者じゃないと分からないです。

事業内容はシステム寄りでそちらに強みがある?

パッと見た感じ、ハードは外から買ったものを組み合わせソフトをつけてすべて包括した感じで提供しているのかと認識しました。そんなわけでハード的には強みが無いと思うので、システムというかソフトウェアといったところに強みがあるんでしょうか。

実験補助的なものが主なようなので、自動運転が研究から開発フェーズに移った時にどれだけ恩恵に授かれるかと考えると…どうなんでしょう。急所となる特許でも持っていれば強いんでしょうが、個人的にはセンサみたいに量産で大量で使われるところに強みが無いと、いざ自動運転が普及・拡大する時に波に乗れないのでは?と思ってしまいます。

 

ストックオプションについて

見ていて気になったのがストックオプションの数量とその価格です。

ZMPのストックオプション株数

ZMPのストックオプション株数2

ZMPのストックオプション価格

 5円の権利が100万株弱、63円の権利が230万株、150円の権利が170万株くらい生きています。

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発行株式が4,000万弱です。発行株式の1割以上のストックオプションがまだ残っており、しかもその価格が低いんですよね。これを見たとき僕は結構驚いたんですが、ベンチャーってこんなものなんでしょうか。

ZMP買うの?

僕は買いません。安定して利益を出している会社が好きなので、急成長のロマンにかけるような投資は僕の管轄外です。

自動運転は人気テーマであるしZMPはその目玉銘柄とされてきました。現状の経営状況や市場を見ても今後は予想できないでしょうし、 一発当てれば大きく飛躍する会社というのはあるでしょう。そんなわけでIPOが盛り上がることは間違いないかと思います。

2億の研究費でどこまでやれるのか

最後にちょっと自分の考えをぶちまけます。

ZMPの27年度の研究開発費は2億円と記載がありました。この金額、どう思います?

ちょっと前の毎日新聞の記事に自動車大手の研究開発費のお話がありました。

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これをみてどう思います?

僕は純粋に、2億ぽっちで何が出来るのか?と思ってしまいました。

自動運転は確かに可能性の塊で、その市場規模は大きく、移動手段の広告化など応用も効くでしょう。だからこそ国内メーカーだけでなく海外も、車メーカーだけでなくGoogleなどのIT企業もこぞって参戦している市場であります。レッドオーシャンです。そんな中でZMPの規模はあまりに小さく、また特徴と言えるほどの特徴が見えない状況であまりにもてはやされていないか…と思ってしまうのです。

 

まぁ、何にせよ大型IPOです。祭りと割り切って参加するのもいいでしょう。ロマンを求めるのも1つの投資の在り方です。僕の意見は1つの見方、好みが違うというだけの話です。最後に穿った意見を述べましたが、日本は自動運転でドイツやアメリカに遅れている状況と認識しています。そんなわけで大手にもベンチャーにも頑張って欲しいという気持ちはあります。僕の考えに反して、ZMPが飛躍してくれれば、それはそれで嬉しいことに違いはありません。

(12/8追記)上場延期

結局、上場は延期するみたいです。

上場が実現する日は来るんでしょうか……。

*1:情報漏洩が元で延期になりました