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シボのムラに完全敗北して力ずくの対応をしたお話

安モデルといえばシボ樹脂外装

安いモデルの外観は、しばしば塗装無し仕様になります。塗装が高いからです。塗装工程の追加や塗料費、信頼性の検証と対策、歩留まりの悪化…etc.が効いてくるから、当然ですよね。

そうした安モデルの外観は大抵が樹脂の成形品で作られていて、その表面にはしばしばシボ加工が行われています。身近にあるプラスチック用品を見ると、例えば車のハンドルとかキーボードのキーには、表面がザラザラしてて安っぽいツヤがないですよね。あれがシボ加工です。あのザラザラは、金型の表面を化学腐食(エッチング)した模様が転写されたものです。塗装のような別工程が必要なく、安価かつお手軽に外観品質を向上させることができます。

シボムラの要因

しかしシボは万能ではありません。光に当ててみると、シボの見え方にムラができることもあります。理由は様々、自分が経験しただけでも、下記のような要因がありました。

  • 偏肉による保圧かかり具合の差
  • ガス抜けの悪さによる転写不良
  • ヒケによるもの

シボムラは成形条件と金型のメンテナンスで誤魔化せる、もとい直せる場合があります。そして、誤魔化せない場合も。

シボムラが直らない時、設計者にできること

成形のトライを何度行おうと、一向に改善が見えないシボムラにお手上げの現場。
「この外観では出せない」と、妥協の余地なく落としてくる品質保証部門。

現場と品証の合間で揺れるのは、いつも設計開発部門であり、この仕事のキツイことの1つです。現場がお手上げのものをどう改善しろと言うのでしょう?

答えは、【磨く】です。

こいつや、

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こいつを使うこともあります。

磨いて、ならすのです。

ただ磨くだけではだめです。量産する部品なので、適切に管理する必要があります。磨きに使うバフクッションの番手はもちろん、磨く時の荷重、方向、往復回数を定義しなくてはいけません。その条件を判断し、図面に入れ込んで末端の作業者まで守らせるまでが設計のお仕事です。

磨く条件を見つけるまでの過程はひたすら地味かつパワープレイです。条件ごとの見栄えを自ら磨いて確認、関係各所との調整と限度見本の作成…。メカ屋の問題は、最後までもつれ込むと手と足を動かしてなんとかする系が多いです。それでも量産対応まで着手しなくていい場合は幸せです。工場に人手が足りなかったり、部品が納入済みで捨てられなかったりの場合は、プロジェクトメンバー総出で工場の倉庫で磨き作業に従事することもあります。量産の恐ろしいところです。

まとめ

シボムラと、その対策の思い出話でした。年末の掃除の時、机から出てきたバフを見て、昔を思い出してしまい、勢いで書きました。こうした悲しい思い出は教訓だけ頭にいれ、年越しとともに忘れたいものです。

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