最近担当している機種は小規模なため、メカ設計は基本的に僕1人で回しています。目指す商品性は何か?安全性は何を考慮すべきか?そのために必要な機構や、部品の材料は何を選択すれば良いのか?そういった事を考える、設計の初期の初期を構想設計といいますが、そこを初めてフルに経験しています。
構想設計では考慮する事が非常に広く、それは必ずしも技術的な話だけにとどまりません。経験こそあれど、抜けや漏れを防ぎ、またこれまで培ってきた事の復習もかねて買ったのが「設計検討ってどないすんねん!」という本です。
設計に必要な知識を幅広く押さえた若手向け書籍
この本では設計検討って何?というところから構想設計で考慮しておく事を一通り紹介し、最後に詳細設計に役立つ基礎知識を学ぶ事が出来ます。材料や製造法についての紹介もありますが、あくまで触りといったところで実際に設計する上に必要な知識まではカバーしきれていません、他の本を読んだり実践を積んだりして知識の補完をする必要はあります。 内容としては浅く広くといった感じで設計業務になれていない若手に向いていると言えるでしょう。
そんな本を設計を何年もやっているお前が読んで何かあったのかとツッコミを受けそうですが、自分としても得るものが大きく2つありました。
「部品担当より一段俯瞰した視点で設計を見る目を学んだ」
「自分が武器とすべき専門性を考える材料となった」
この2つです。
一段俯瞰した視点
僕が勤めている所はある程度の歴史がある会社で、社内的なノウハウがあり必達スペックや評価方法もきっちり定められています。現場設計者としてはそのスペックを満たす事に集中してしまいがちです。これは…自分の事でもあるので甘い考え方かもしれませんが…現場という戦場での事なのでしょうがない事なのかなと思います。
しかし、それらのスペックの背景にあるのは過去の障害事例などです。大切なのはスペックを満たす事ではなく開発した製品が顧客の想定以上の物であることです。そしてそのためにはどういう使われ方をするのか、どんな環境で使われるのか…などなど、本当は個々の開発製品について考慮されるべきなんですね。
構想設計というのはそういった仕様レベルで1から考えて、そのために必要な構造その他を設計していく場です。設計者としてキャリアを伸ばすならいずれは部品担当からその上に上がる事になるでしょう。その時にこの俯瞰視点というのは役に立つことでしょう。
自分の武器を選択する材料
設計者はそれ自体、何の専門家でもないです。設計者にとっての専門性というのは、例えば熱であったり材料だったり、あるいは金型に強い設計者なども有りでしょう。これらは同時にいくつも伸ばしていけるものではなく、どこを伸ばしていくかは強い意志をもって時間と努力を重ねなければ得る事が出来ません。
ではどこを伸ばすか?と考える時に、この本が役に立ちます。設計者に必要なスキルが浅くとも全て網羅されているので、「この分野が面白そうだ」とか「この専門なら長く活躍できそうだ」と行った事を考える材料になるんですよね。
新人・学生に読んで欲しい、中堅にも役立つ
僕にとっても値段以上の価値がある本でしたが、やはり本著のメインターゲットは若手だと思います。特に設計というものが分からない新人にこの本をオススメしたいです。設計する時には何を考えれば良いのか?新人時代の僕はそれが分からずトライアンドエラーで経験を積んできましたが、それは僕の心身と会社の懐に負担をかける学習法でした。たとえ深い知識ではなくとも、有るのと無いのとでは成長の速度も周りへのダメージも大違いです。ところどころ大学で学ぶような内容もありますが、学術より実践向けで設計開発を行う上で役立つノウハウが詰まっています。
「研究はやってきた。しかし設計・開発の経験がない。」大半の理系学生はそうでしょう。だからもし設計をこれから始めようとする人がいるならば、最初の一歩としてこの本を薦めたいです。
こんな記事も書いています。
ハードウェアの設計に関わり深いデザインの本の書評です。