WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

復活する海外出張と三現主義

コロナ禍の終わりを象徴する現象といえば何を思い浮かべるでしょうか。
脱マスク、飲み会解禁、オフィスへの回帰…色々とありますが、自分は海外出張の復活ですね。

コロナが始まる前は、設計した部品や組立に立ち会うため海外の工場に出張することは半ば常識でした。しかしコロナ禍で急に立ち合いを打ち切ることになり、常識は崩れ去ります。「これで乗り切れるの?やり切れるの?」と初期に同僚みんなとざわついたことは記憶に新しいです。余談ですが、中国の武漢がニュースで取り上げられ始めた流行初期あたりに中国出張の話があり、「出張いくの?いっていいの?帰ってこれる?」とボスや先方と会話していた時は、歴史の1ページをまさに体験しているんだなと感慨深いものを感じました。

そして時は経ち、強引な軌道修正も何とか乗り切り仕事を回せていました。海外出張しなくても何とかなるものだね、経費削減で今後も行かないのかね、などと仲間内で話していたものです。が、やはりというか、コロナ禍の終焉と共に観測範囲で海外出張が増えてきました。行かなくても回っていたんだし、行かなくてもいいのではと思うのですが…。

そもそも工場立ち合いは何のために行くのでしょうか。

製造業でよく謳われる「三現主義」はご存じでしょうか。机上の空論に甘んじず、現場現物現実を直視せいとの諫言です。設計者たるもの現場を知らずに設計はできず、問題に対して現物と現実を見つめる必要があるのは、自分も同意します。

一方で三現主義=工場立ち合いかというと、そうでもないかなと思っています。現場については、1度見たものを何度見ても得られる情報はサチります。現物現実については確かに工場にいるのが一番効率がいいものの、郵送してもらえば出張せず現物は見れますし、写真や動画などで情報量は落ちるものの現実を知ることも可能です。実際、海外出張が無い時期は何れの製造業もこれらの手段を駆使して回していたのではないでしょうか。

海外出張についてずいぶんネガティブじゃないか、行きたくないのか?と言われそうですね。実際、行きたくないというか行けないのが今の時分の立場だったりします。

理由として大きいのが家庭都合です。いまの時代共働きは珍しくなく、うちも例に漏れず共働きです。家事育児も分担、、何ならリモートワークが出来る分、平日は自分の比重が大きいです。もし海外出張で週単位で穴をあけたら、日々のやり繰りをどうするか。これは非常に難しい、、。

また出張しても必ずしも役に立つわけではないのもネガティブな要因です。問題が起きた時に設計的知見が役に立つことはありますが、逆に言うと問題が起きなければ通常の業務をこなすしかないのですよね。出張のお供であるラップトップPCではCADをぶん回せないので国越えのリモートで日本の端末に繋ぐわけですが、回線が重すぎて正常に動作しない。業務効率も落ちる。
設計関連の資料やオフィスでなら揃っている参考すべき現物、なんてものも立ち合い中には見れません。

そんなわけで、個人的に1度行ったことある場所に、何か問題が起きるかもしれないから、くらいの温度感で行くのは乗り気になれないのですよね。

とはいえ「コロナ禍だから」との言い訳が立たなくなった昨今、現場からは生贄を求められることは必至なわけで、やれやれといった心持ちでコロナ禍からの正常化を迎える今日この頃です。