Twitterで流れてきたファーウェイの求人があまりに高給で驚きました。
ファーウェイ、こんだけ給料出せるならそら日本に工場つくるわ(よくしらない pic.twitter.com/v5OI4JSUUV
— 生体装置部品 (@tjmlab) 2017年6月29日
軽く調べてみたら、リクナビに詳細乗ってました。ネットワーク系や、最近流行の技術周りのエンジニアの求人みたいですね。
日本の著名電機企業の新卒給与と比較すると、その差は歴然です。(修士了で比較)数字は同じリクナビから拾ってきました。東芝とか、あの状況で新卒採用するんですかね…。
新卒でこの差なので、中途とかでノウハウ持ちの人はさぞ高待遇で迎えられている事でしょうね。
ノウハウは金で買える
自分が見てきた範囲でも、中国台湾あたりの新興企業に転職していった人を何人か見かけます。彼らはもちろん能力面でも優秀でしょうが、それ以上に新興企業が欲しているのは彼らの持つ、日本企業が長年積み上げてきたノウハウでしょう。
ノウハウ、僕のようなメカ設計の業界で言うなら寸法公差の管理範囲や、その管理体制、製造技術あたりがそれにあたるでしょう。これらは製品の形状を見ただけでは分かりません。何も分からない状態で形だけ真似ても地獄を見るだけです。こうした「見ただけでは分からない」技術は特許化してもそれを指摘する事が出来ないので、通常は特許になりません。
例えばスマホの防水構造
特許化されないノウハウについて、1つ例を挙げましょう。スマホやタブレットの防水技術です。これらの防水はパッキンによる封止や、防水両面テープによって防水がなされており、服の繊維一つまぎれるだけでダメになっちゃうような繊細なものであります。
「パッキンはどの堅さのものをいくつ干渉させるのか?」
「干渉させるリブ・パッキンの形状は?」
「両面テープの幅はいくつまで狭められるのか?」
「貼付け時の圧力はいくつで、どうやってその圧力を担保するのか?」
などなど、防水技術というのは単純に形状を見ただけでは分からない、ノウハウの塊です。モノのバラツキは量産しないと見えてこないものであり、モデルを重ねる毎に蓄積していく社内のノウハウにより、少しずつカイゼンが進んでいったものでもあります。
そんなノウハウが詰まった形状が、外国産の製品に使われているのを見た事があります。形状自体はベンチマークすれば真似するのは容易です。しかしこの形状にした後の管理はどうしてるのでしょうか。ゴリ押しの人海戦術で良品だけ選別して量産しているのかもしれませんし、うまいこと管理して量産しているのかもしれません。外からは判断不可です。しかし、そういえば、その販売元の会社に転職していった人がいたようないなかったような...
給料を上げるべきか同業転職を縛るべきか
ノウハウを持った社員を留めるには、いわゆる飴を与える「待遇を改善する」案と、鞭でしばく「同業への転職を制限する」案があるかと思います。
僕は雇われサラリーマンなので前者の案が一般的に浸透して、エンジニアのベース給与が上がってくれれば嬉しいなーとか思うわけですが、現状このパターンはなかなか見かけません。
後者もほとんと聞いた事無いですけどね。僕も前職辞める時に「同業には移れねぇぞ」と元部長から脅しを受けましたが、普通に同業に移ってますし。この点きっちりしているイメージがあるのは、アップルですね。同業に数年は移れないよう一筆書かされると聞きました。一定レベル以上の人だけなんでしょうか。
産業スパイとの線引き
前職のノウハウを利用するというのは産業スパイのようでもあります。秘匿技術の流出で大損害を被ったというと、新日鉄の方向性電磁鋼板が思い当たります。
産業スパイはダメ、絶対!とは思うものの、どこまでが自分のスキルでどこまでが会社のノウハウ・技術なのかは、その線引きが曖昧です。図面の管理寸法の公差を「実はこのくらいまで公差とってもイケるから、広げてコスト減らそう」とか「塗装の乾燥時間、温度をこの組み合わせにすると耐久性上がるよ」とか。
確かにそれは前職のノウハウであるわけですが、同時に自分の知識にもなっているわけです。一般的な知識・経験と特殊な技術の境界は、真面目に規則を遵守しようとする人にとって悩ましい問題では無いでしょうか。
引き抜きは悪い事ではない
特に中国・韓国系の会社に日本企業から転職すると「技術の流出」を理由に叩かれる傾向にあります。僕自体は、新日鉄の例のようなあからさまな産業スパイは別として引き抜き自体は悪い事じゃないと思いますし、それで転職者が責められるのは間違っていると考えています。技術が流出するというなら、それを防げなかった経営サイドに責があるでしょう。
それにノウハウの循環が無ければ、技術が陳腐化しない限りは先行者の優勢を崩す事が出来ません。それは既得権益に繋がるわけで、よろしく無いですよね。技術だけでなく人事面でも健全な争奪戦・競争が起これば、もっと世間は良くなっていくんじゃないかなと思います。
そんなわけで外資には高給をもってガンガン進出してきていただければ。外に頼らないといけないあたり、ちょいと情けなくはありますがね。
こんな記事も書いています。
ノウハウ繋がり。CADに限らず個人持ちのノウハウって結構あるんですよね。
製造場所が変わる事で役立たなくなるノウハウ・知識も多分にあります。