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基板に実装する部品のズレは二乗和、それとも積み上げで考える?

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部品感ギャップを設計する際に、各部品のばらつきを加味して設定します。どう加味するか、メジャーな考え方が累積公差の計算です。

temcee.hatenablog.com

この考え方には弱点があります。根本に、部品の仕上がりが正規分布する前提だということです。

で、今回のお題は基板の実装部品です。実装部品の実装ズレ、これって二乗和で考えて良いのか、それとも積み上げで計算すべきなんでしょうか。

基板の製造工程

基板の製造工程は、ざっくり下記の通りです。

基板の製造工程

このうち、実装ズレにつながるのが下3つの工程。ソルダーレジスト形成、ルーターカット、部品実装ですね。

ルーターカットが何故実装ズレに効いてくるの?と思う人がいるかも知れません。
実装のズレはどこに対してのズレなのかを考えると、お分かりいただけます。測定基準があるからズレが測定できるわけで、往々にして測定基準は基板の外形で取られます。(丸穴を基準にするとしても、ルーターで加工する限りは同じことが言えます)

では、それぞれの工法によるズレの種類について述べます。

ソルダーレジスト形成

手法がいくつかありますが、印刷と同じような工程でパターンを作ります。つまり、版が使われます。

版があるので、基本的にはズレは版の出来上がりから正規分布すると言えるでしょう。

ルーターカット

基板を切る際にはルーターが利用されます。ルーターはパスをプログラムしてカットしていくわけですが、ここで発生するズレは正規分布しません。

部品実装

書いといてなんですが、リフローでははんだの表面張力で部品がセンタリングされると考えられます。設計段階では、ズレが起こらないと想定して良いのではないでしょうか。

リフローによるセンタリング

まとめ

以上をまとめると、正規分布するズレと正規分布から外れるズレが合わさったものが、実装ズレといえます。

それぞれの要素を抽出して公差計算に盛り込めればいいですが…自分の経験的に、工程ごとの細かな公差を握ったことは無いですね。最終的に出来上がったものが±○に入っていればいい。そんな取り決めばかりです。

この環境で色々経験した結果、自分は実装ズレは積み上げで考えるようにしています。安全側に振った判断ですね。ちょくちょく、度胸がないと怒られます。この考え方だと、BtoBコネクタ使うと単純に公差が2倍のってきて、大きめなギャップ設定が必要になるので、安全を見すぎという意見も、まぁ分かります。分かるんですが、色々経験してしまったので。。

実装部品のズレを設計する時の、考え方を書いてみました。

自分はあくまでメカ屋で、基板はメカの部品じゃないのでイマイチ弱いところでもあります。(実装するとこ以外は動画しか見たことないです)
もし基板製造につよつよな方がいましたら、自分の考えの及んでいない個所とか、指摘いただけると助かります。

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