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「オタク経済圏創世記」日本のコンテンツビジネスは何故グローバルな成長を遂げ得たのか

「オタク経済圏創世記」なる本を読みました。

マンガ・アニメ・ゲームに代表される『オタク』的コンテンツは、今や日本のみならず世界に広がり、成長を続けています。

いかにして日本のオタク産業が興り、成長し、世界に広がっていったのか。日本産エンタメの歴史と、発展の背景にあるものをわかりやすく解説してくれるのが本書です。

普段それとなくコンテンツを消費していると気が付かない、消費方法の変化や、流行を維持するための努力を、「ポケモン」「バンドリ」「ラブライブ!」などの実例を挙げながら説明してくれます。雑学として、面白いです。

それでいて、ビジネスを成すうえで考えさせられる内容もあります。コンテンツビジネスの歴史を紐解く膨大な知識量と、日本コンテンツの海外展開を行った経験、そこから考察される日本型の経営の在り方。最終章で語られるこの内容、なかなかに刺さりました。

本書の中では印象的なお話が多々でてきたので、いくつかかいつまんでお話していきます。

逆境から生まれるもの

例えばアニメ制作。手塚治虫が鉄腕アトムのアニメ放映を決めた際の契約が、50万そこそこの放送検料に対して、制作原価が250万。完全に赤字商売です。

この価格設定を成り立たせるために別軸で収益確保を模索する必要ができ、それがキャラクターのライセンスビジネスへ繋がり、模型やプラモなど新たな軸が見いだされる。作品のメディアミックスが広がることで、世界観も広がっていく。

追い詰められた状況だからこそ、活路を見出すためのチャレンジを行う必要がでてくるわけです。そのチャレンジから新たなブルーオーシャンを掘り当てることもあるでしょう。現状を維持できないという危機感、これは仕事にせよ趣味にせよ、何かを成すには必要な要素なのかと考えさせられます。

ライブコンテンツxコミュニティxストーリー

現代のコンテンツは単体で消費されるものではなく、マンガからアニメ・ゲームへと広がり、関連商品や劇場版…とメディアミックスを行い世界観を広げて、ファンの確保と維持を行っています。ファン同士のコミュニティも、世界観を共有し確固としていくのに一役買っているでしょう。(だからこそリアルのイベントが盛り上がる)

これは多分、オタク的コンテンツ以外についても、同じことが言えるでしょうね。

僕が作っているような電気製品でも、数値では測れない要素が購入に絡んでいます。それは例えば「日本製は質が高い」とか。何かしかのストーリーが存在します。このストーリーをより多くの人が興味を持ち、共感してくれるものにして、その世界観を維持していかなければ、物が売れない時代になっています。だから質がいい製品を作ればいいだけでなく、それを持つことで共有できるストーリーを、より多くの人に伝える努力をしていかないといけないんでしょうね。

日本型企業の戦い方

日米では、国家の成り立ちから民族の多様性、組織のありかたまですべてがすべて違っており、こうした文化的な違いは後付けですぐに変えられるものではない。だからこそ日本文化を意識して、日本的にコトを勧めなければならない。

こうした指摘にはちょっと思い当たる節があります。変に米国流のやり方を取り込み、足並みが揃えられず空中分解したり、部分最適に陥り全体として非効率な状態に陥った例。自分も覚えがあります。

アニメ製作の委員会方式に見えるように、日本型企業の特徴は、まったく背景の違うプレイヤーが1つの目的のもとに集った時に、お互いをすり合わせながらコトを勧めていけるところにあります。良かれ悪かれ、これが日本らしいところです。動きが遅い所はあるものの、日本的大企業も新興的な要素を取り込みながら、漸進的に変化をしていき、生き残ってきています。これはこれで、認めるべき事実なのかなと思います。

まとめ

「オタク経済圏創世記」を読んで印象に残ったことを書き連ねてみました。妻子を持ち引退状態にあっても僕はオタクコンテンツが好きで、強い興味を持って読むことができました。

本書はデータも考察も豊富で、読んでいて自分も考えさせられることが多かったです。マンガ・アニメ・ゲームが好きな人はもちろん、何らか「作る」に関連する仕事をしている人は読むと新しい知見が得られることでしょう。

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