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開発職の僕が古いiPhoneのパフォーマンス低下に賛成する理由

Appleが旧式iPhoneのピーク性能を意図的に落としていることを認めた件で、先日ちょいと盛り上がってましたね。
gigazine.net

要約すると、こんな感じです。
リチウムイオンバッテリは繰り返し充電を行っていると劣化でピーク電流が流せなくなる。そうなると予期せぬシャットダウンの危険があるので、意図的にピーク性能を落とす更新を入れてる、と。

この件に対して「ユーザーがパフォーマンスかシャットダウンか選べるようにすべきだった」というコメントがチラホラありまして。Wiredの記事でも、オプトイン形式(ユーザーに選択肢を与える)にすべきだった…なんて書いていたりで、それは悪手じゃないかと思った次第です。
wired.jp

予期せぬシャットダウンの影響

例えば深夜にアプリやOSアップデートをしている最中にシャットダウンが起き、復帰できなかったとしましょう。iPhoneで予約していたアラームは鳴らず寝坊してしまうかもしれません。緊急の連絡があったとしても受け取ることはできません。以上のことで実生活に大きな打撃があったとき、あなたはこれを「自己責任」と納得できるでしょうか。

また唐突なシャットダウンは端末の文鎮化(動かなくなる)に繋がります。ソフト的に不味いタイミングで落ちてソフト的に文鎮化することもあれば、強制シャットダウンで基板の実装部品が過負荷で飛んでしまうこともあるでしょう。その時に、あなたはアップルを責めずにいられるでしょうか。

あなたは納得できたとして

オーケー。あなたは上記のリスクを十分に把握できるほど知的で、起こった事象にも責任が持てる出来た人間かもしれない。ただ世界中のみながそうでしょうか。億単位で出荷されているiPhoneです。問題の発生率がゼロコンマ以下でも台数ベースでは万単位以上のお話になります。その中には訴訟が盛んな国やクレームが入りやすい国の人も含まれるでしょう。

その事を考えたうえで、なおユーザーに選択権を与える気になるでしょうか。僕はそこまでユーザーの知識と良識を信用することはできません。

スマホではありませんが、僕も開発を職にしています。様々なユーザーの声を見ることもあります。良識的な人がいれば意地悪な人もいるし、熟練者がいれば初心者チックな人もいます。そうした中で、シャットダウンに行きつくようなクリティカルな問題をユーザーに委ねるほど恐ろしいことはないです。だからパフォーマンスを落として端末を守るというアップルの選択には賛成です。

アップルのココが良くない

ただアップルの対応に怒る人がいるのはわかるんですよ。ユーザーに通告することなく、こっそり更新入れてますからね。これは良くない。根本的な原因が現代のバッテリ技術の限界なのか、アップル側の使いこなしの問題なのかはわかりませんが、とにかく起こりうる現象と、その対策に伴うパフォーマンス低下はキチンとアナウンスすべきです。バレなきゃいいや、というのをアップルレベルの大企業がやらかすのは、残念です。

余談)ユーザーのバッテリー交換について

バッテリーの問題なら、そもそもユーザーがバッテリー交換できるようにしとけよ!との意見があったので、これについてもちょっと意見しておきます。

僕はバッテリー交換できるようにするのは賛成です。1つの端末をそれなりに長く使いたいのが1番の理由ですが、僕は職業柄、機械いじりになれてるし、正規品しか使わないようにしてるのも大きいです。で、ユーザーがバッテリー交換できるようにした際の弊害はまさに、後者の内容なんですね。

「交換作業による破損(もしくはケガ)」「類似品の使用による破損」これをクリアするのは中々難しく、ユーザーが作業できるようにするなら、ある程度は問題が起きるのを覚悟しなきゃいけません。

あと、設計的にも素人が弄れる構造にするのは構造制約が多く強度的にも弱くなるし、コストもアップします。

スマホは買い替えサイクル短いですし、この辺を考えていくと「バッテリー交換できなくてもいいんじゃないかな」と製造側としては判断したくなるんじゃないですかね。