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現場に寄り添わないカイゼンは成功しない

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ゲーム理論の本を読みました。ゲーム理論を学ぶことの有用性に触れ、理論の基礎から応用、発展までを簡易な例と図解で分かりやすく解説している、良い入門書でした。

ゲームでは、プレイヤーは合理的に行動し、利得を最大化しようとします。実際に製造の現場でも、設計と製造で利得のやり取りが発生する場面が過去にありまして、ゲーム理論を応用できそうだな、と考えながら読んでました。

Win-Winのカイゼン提案だが

歩留まりが悪い部品について、ひと手間加えることで品質改善できるのでは?
そんな提案を製造ベンダーにした時のお話です。

歩留まりが改善すれば部品の製造コストが下がり、ひいては部品単価を下げる事ができます。単純に部品単価を下げるとベンダーは美味しくないので、単価が下がる分の半分をベンダーの利益にしていい。そんな条件で提案したわけです。

で、これが断られちゃったんですね。

このお話を深掘っていくと、現場の作業員がプレイヤーとして登場してきます。ベンダー、つまり会社としては利益が増えるのは美味しいですが、現場の作業員はそれで待遇が良くなるわけでもなし。今と違うことをさせられる手間が、彼らとしてはマイナスなわけです。合理的に考えると現場の作業員はカイゼンを受け入れないと考えられ、そこが分かっていたからベンダーもNoを突きつけてきたんですね。

インセンティブで行動は変えられるが

冒頭に紹介した書籍によると、こういう時にはインセンティブがキーとなります。何らかアメとムチを与えることで、現場の作業員が「是非ともカイゼンしたい」環境にしてやるわけですね。

もっとも別会社の社員の待遇に介入できるわけもなく、ベンダー側の担当者に現場を何とかしようと思わせるだけのインセンティブを与えるのも、なかなかの難問に思えます。自分の所で工場を持っているところは、こういう時に頭ごなしに指示できるのが強いですよね。(中の人は大変ですが。)

設計の戦い方は

アメとムチの使いこなしと応酬で、いかに相手を動かすか。これは購買部門や経営部門など、対人戦を行う部署の戦い方ですね。

設計、技術職としてはインセンティブで相手を動かすのではなく、そもそも手間を減らした上で品質も上げられるような設計だったり、製法だったりを考えるのが戦いなのかなと思います。これは全然ゲーム理論から離れちゃうんですけどね。
とはいえ、技術職といえど折衝が生じるのが今の世です。人の意思決定がどのようになされるのか?知っておくのは有用でしょう。

人の意思決定に関する本といえば、デール・カーネギーの「人を動かす」が自分の中では一番ためになるし、面白かったですね。相手の利を考えるところは、ゲーム理論に通じるところがあります。ゲーム理論を学んだあとで読み返してみると、また新たな発見がありそうです。積み本を消化したら、息抜きに読んでみます。

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