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何でもできる人が一番カッコいい、ハードウェアハッカーを読んでそう感じた話

ハードウェアハッカー、ようやく読了しました。

著者のアンドリュー・バニー・ファン氏の世界は恐ろしく広く、量産に関する話からエレクトロニクス・電子部品(チップ)に関する知識、中国の偽物に対する深い洞察、スタートアップやクラウドファンディングの体験に、知的財産への確固としたスタンス、果ては生物学の領域…と、自分でも書いていて良く分からないくらい、本当に幅が広いです。

それらすべてを繋げるキーワードがハードウェアで、物質から成るこの世界は本当に知らないことだらけで、それでも好奇心を持って臨めば物事の成り立ちは理解できるものなんだな、って希望的な思いを抱きました。

で、それ以上に強く心に残ったのは「何でもできる人ってすごい!カッコイイ!」って感覚なんですよね。

メカ・エレキ・知財に生物学、営業や調達やその他もろもろ、バニー氏は1人で多くのことを経験しているし、やってのけているんですね。それも頭がおかしいレベルで。

普段、企業勤めしていると「開発として生き残るには尖らないと」とか「オンリーワンの存在」と領域を狭く・深くする方向に行きがちです。会社という、法律上の人はたくさんの生身の人間がそれぞれの強みを生かして動いていくわけで、この法の人を強くするには中の人間がそれぞれの分野で強くなるのが理想なんですよね。

法人の擬人化人格である上司は言います。「専門性を絞って尖らせろ、お前の道は3つだ。手をひたすら動かす役、走り回る役、深く考える役…」

そんな中にあって、「何でもできる人」というのは逆に誰でも替えが利く存在として、あまり重宝されないのかな、と感じてました。

ただ、会社で有用な一部分だけ尖った人が法人から抜けて1人の人間になると、逆に何も作れなくなるのでは、とも僕は思ってます。法人内で有用=個人で有用という方式は、必ずしも成り立つ訳では無いのでは無いか?

昨今、いろんなツールが発達してマルチな方面にスキルを伸ばした個人が、個人のまま素晴らしいプロダクトを製造・発信しているのを見て、「あぁいうの凄いな、カッコいいな」と思わされたものです。ハードウェアハッカーの読後感も、それに似たものがありました。「個人でこれだけ広く、深くの物事を理解できるのか。カッコイイ!」ってね。

何でもできる人はカッコいい!自分もそうなれるのかな?なれるかもしれない。なんなら、その鍵はそこらへんに転がってる。バラしてみればいい。

自分に領域を広げる機会があるのか、もしくはそのような機会を作り出せるのかはわかりません。ここ最近は特に、直近を乗り切るだけでアップアップして先が見えなくなってますしね。

ただ「何でもできる」という事への憧れがフツフツと蘇ってきました。そうありたい、と思い、個人的な活動を絶やさなければ、自分もいつか「何でもできる」領域にたどり着けるのではないか。その意思を大切にしないと、と感じさせられました。

最後に、ハードウェアハッカーを人に薦められるか?ということについて。

正直、お話が広く深くなので、ハードに対して興味があり、なおかつメカ・エレキ・知財のどれかでもいいので知識を有してないと、割と読むのがキツイと思います。僕も専門外のところ、チップやら回路関係のお話はちんぷんかんぷんでした。バイオのところは語るべくもなく、です。

逆に、そういう知識をもってて、なおかつ興味があれば非常に楽しく有益な本です。世界の広さを知れると思いますよー。

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