WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

「銃・病原菌・鉄」ヨーロッパが世界を支配出来た理由と、支配されないために僕らがやるべきこと

最近、「銃・病原菌・鉄」という本を読んでいます。
5つの大陸で文明の進歩に差が出たのはなぜか、ヨーロッパが少人数でアメリカ大陸を制覇できたのはなぜか。そんな疑問に対し、事前知識なしで理解できるよう、細かくかみ砕いて書かれている本です。

何故アメリカ大陸は外来人に制覇されたのか

で、何故アメリカ大陸の文明が滅ぼされたのか。直接的な原因はタイトルにあるように「銃・病原菌・鉄」です。こん棒で殴られても致命傷に至らない鉄の装備、遠距離で殺傷性があり轟音が心理的武器にもなる銃という武器、何より原住民の9割以上に死をもたらした病原菌。

文明の進歩にムラが出来た要因

そんな「銃・病原菌・鉄」をさらに掘り下げる…何故アメリカ大陸では「銃・病原菌・鉄」が発達しなかったのか…と、早期に農耕技術が発展し「食べるための労働」以外に長く時間が使われたことが大きいんですよね。農民や採集民以外の職種、首長や職人みたいな食料をもたらさない人々も農耕食料で賄えるようになったことで、社会的・技術的に発展できたということです。

もっと突っ込んで、農耕技術が特定の地域で早期に開発されたのはなぜか?これは一言にすると「環境が恵まれていた」ためです。農耕に適した土地と植物、家畜化に向いた動物、東西に長く=同緯度で技術や人の移動が容易い大陸…。

恵まれた環境で、余分な時間を作ること

かなり端折りましたが、余分な時間を作ること、そしてそれは環境によること…というのが「銃・病原菌・鉄」から僕が読み取った「支配者」のエッセンスです。

このエッセンス、現代にもってきて、さらにミクロな目線にまで落とし込んでいっても十分当てはまる内容だと思うんですよね。

何が言いたいかというと、生きるための時間(=労働)以外のことに時間を割けるようにすること、それができるように労働環境を変えるべきなのかな、ってことです。

余暇の重要性

余暇が無ければ世間や技術の事を勉強できません。勉強以外の、レジャーの時間だって、人は何をすれば楽しくなるのとか、生活するうえでどんなものがあればいいのかとか、需要・生活改善の発見に繋がる時間です。

目の前の仕事だけで手一杯になって発展の余地がなくなり、いずれ外から来た征服者が運んできた「新しき物」に駆逐され、支配されてしまう。このパターン、電機業界でそこそこの時間を過ごした僕には痛いほど覚えがあります。

業界全体を救うに個人で出来ることは限られますが(というか無理)、個人レベルのお話だと、発展して価値観磨いておけば業界が潰れても会社移ればいいだけです。意識的に余暇を取って、仕事以外でスキル・経験を積むようにしておきたいですね。

環境は変えるしかない

フリーランス薦める系の人みたいなことを言いますが、環境を変えないと余暇ってなかなか出来ないと思います。

仕事の効率を多少上げたところで、長時間労働する部署では仕事量的にも精神的にも早く帰るのって難しいんですよね。上からの圧力を跳ねのける強靭な精神を持っていれば、やることだけやってサッサと帰ることも可能でしょうが、そういうところで変に精神をすり減らすくらいなら、会社移った方が幸せになれるのかなと。

「銃・病原菌・鉄」では人種による優劣が無いと指摘がありますが、個人差についても同じことが言えるんじゃないかと思います。個人レベルの生まれつきの能力差なんて大したこと無くて、家庭環境とか学習環境、労働環境によって差が生まれてくるのでは、と。

今の時代恵まれてるのは、環境って個人の努力で変えられることなんですよね。アメリカ先住民は肥沃三日月地帯に移り住むことはできませんでしたが、僕らは家庭環境をよりよく変えられるし、労働環境も住環境だって、その気になればすぐに変えられる立場にいます。進歩した社会・科学技術に感謝ですね。

まとめ

「銃・病原菌・鉄」を読んで感じた事を書きました。書評より自分が思ったことメインに書いたので、タイトルから【書評】ってのは抜いています。面白い本なので、書評としても書こうかなーと思考中。

この記事では「銃・病原菌・鉄」のエッセンスだけ抽出しましたが、「銃・病原菌・鉄」の面白い箇所は結論ではなく過程にあります。考察の後追いをしてるうちに入ってくる含蓄の蓄積が何よりも面白いのです。

『分厚い』だと『読みにくい』などという意見を目にしましたが、きちんと仮説→事実の確認→証明のステップに則って書かれており、内容も節ごとに焦点が絞られているので、きちんと読んでいれば難しい本でもありません。

ちなみに、僕がよくやってるCivilizationというゲームでも「食料増やして、人口増やして、研究力上げて、制覇!」の流れを追体験できます。こん棒で武装する他勢力に対し、豊富な研究力・生産力から生まれ来る剣士ラッシュをかけると非常に爽快なので、「銃・病原菌・鉄」に並んでオススメしておきますね。

こんな記事も書いています。

temcee.hatenablog.com

temcee.hatenablog.com

サピエンス全史も人類史として読みごたえがあります。「銃・病原菌・鉄」に比べてよりマクロで、壮大な視点で書かれてますね。