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機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

「トヨタ生産方式を作った男たち」を見て思う、危機感を持って仕事してるだろうか

日経ビジネスのノンフィクション連載「トヨタ生産方式を作った男たち」が最近マイブームだ。毎週配信される日経ビジネスでちょろちょろ読んでいるが、まとまった本で発売されたらもう一度通して読みたい。それだけの価値がある読み物だと言い切れる。

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トヨタを世界一に押し上げた生産方式

トヨタを世界一たらしめているものは何だろうか?僕は技術力でも販売力でもなく、製造力だと思う。製造力が抜きん出ているからこそ同じような基本性能の車種を横並びにした時に他社より価格の優位性があり、大衆に支持されているのだろう。実際に僕が買ったシエンタくんも、同時期に購入候補としていたホンダのフリードより安かったしね。

そんなトヨタの製造の特徴と言えばその名を冠するトヨタ生産方式だね。かんばんだとかカイゼンだとか今ではもうメジャーになっている、この生産方式に関する本もたくさん出てるし、真似をしている工場も多い。僕が以前勤めていた会社ではこの方式を取り入れた製造を行っていたのだが、トヨタのようにうまく回っていたかというと、不良品が次工程に回っていたりするなど完璧とは言えなかった。トヨタ生産方式の全容が分かりにくいのが一つの原因なのかもしれないが、何よりも製造改善にかける本気度の違いがあるのかと思う。サプライヤーから何から、すべてを包括して導入するほどの意気が無くては本領を発揮できないものなんだろう。

危機感がトヨタ生産方式を実現した

前置きが長くなった。

この連載では自動車を作り出す前の豊田自動織機から歴史を追って、現在のトヨタを築く礎となってきた男達の物語が展開されていく。トヨタに限らず現在の大企業の発足当時の話は熱意と冒険、挑戦にあふれていて読んでいて面白い。こうした冒険心の根底にあったのは何だろうか。トヨタの場合は危機感だったのかもしれない。それほどまでにこの連載の中で「アメリカが、ビッグ3が来たらトヨタは終わってしまう」というフレーズが登場している。

戦争を知る世代に取ってアメリカという国がいかに強大であったか。後に生まれ歴史を勉強した僕でも先の大戦で日本は一方的に圧倒されたことが教えられてきた。それらを実際に体感した人にとってアメリカがどれほど恐ろしい存在だったんだろう。日本の遥か先を行くアメリカが日本に進出してきたら…その危機感は相当なものだったはずだ。経営者だけでなく末端までその思いが共有されたからこそトヨタ生産方式は体系化され、多くの抵抗を受けながらも全体に浸透していったのではないか。

自分はいま、危機感を持って仕事しているか

この連載を読んでいると自分に問いかけをしてしまう。「お前はいま危機感を持って仕事しているか?」

先人たちの努力のおかげで、停滞気味ではあるものの今も日本は世界3位の経済大国だ。治安の良さ、教育水準の高さ、保有する技術力も、世界で戦えるものが多くある。そういった環境においてこういった危機感から遠ざかってしまっていないか。少なくとも僕は遠ざかっているように感じる。本当に危機感をもって仕事していた事は、ない。

「AIにとって代わられる仕事」「10年後になくなる仕事」危機感をあおるような記事は今でも良く見かける。しかしそれらを読んでも危機感はちっとも生まれてこない。そこには今たしかに存在するリアルが無いからだろう。実現が見えてくれば危機感は生まれてくるだろうか。

精神論がたたかれる時代ではあるが、それでもマインドが行動に与える影響は多いと僕は思う。それが分かっていてもなお、自発的に危機感を煽る事は難しい。だからせめて、戦後の時代に迫り来るビッグ3に潰されまいとあがいた男達のドラマを読んでいくことで、少しでも自分の中の火を盛り上げるようにしたい。