WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

セブン銀行のビジネスモデルってユニークだね

<まとめ>

・金貸しや運用ではなくATM収益を柱とする収益体勢がユニークだ

・他業種の文化が根底にあるから新しい発想が生まれるのかもしれない

 

 ATMで稼ぐ異色の銀行

僕はセブンのATMを利用することは良く有るがセブン銀行の口座は持っていない。そんなわけでセブン銀行も単なるネット銀行の1つと見ていたんだけど、先週の日経ビジネスでセブン銀行が取り上げられているのを見て、初めてそのビジネスモデルを知った。その特異なビジネスモデルとはATMの手数料に特化した収益体制だ。それも他行に口座を持っている人の手数料によるものである。

普通、銀行は地銀だろうがメガバンだろうが個人・法人から預かったお金を使って貸し出しや有価証券の運用を行う事で収益を上げている。だからこそ昨今のマイナス金利の導入で安定した利回りを得ることが難しくなり、株価の低迷や地銀再編が囁かれたりという事態になっている。

そんな中でセブン銀行は手数料が収益の柱だ、マイナス金利も何のそのだろう。ATM自体はどこの銀行も持っているものだけど、セブン銀行のATMは提携銀行と設置台数の多さから来る利便性の高さと維持管理のコストの低さによって差別化されているようだ。利便性の高さについては急な預金の預け入れなどで僕もお世話になっている。これによりセブンイレブンへ立ち寄る頻度も増えているし、また逆にセブンイレブンに立ち寄ったついでにお金の用事も済ませる事が出来たりと、利用者視点で見て大変ありがたい存在だ。コンビニ売上金をATMで行う事で現金補充のコスト削減をまかなえている点も素晴らしい。普通の銀行では収支が成り立たないような場所でも維持コストが低ければ商売になりうるし、そうして増やす事が出来るATM設置台数は他行が提携を考える上で魅力的なものだろう。

新しいものは既存のものの組み合わせだ

「流通の文化が基本にある」誌面にて社長の二子石氏へのインタビューで出てきたフレーズだ。セブン銀行がユニークであるのは他の銀行とは違ったバックグラウンドがあるからだと述べているのだけど、これにはなるほどと思わされた。ATM自体は別段新しいものでも無いし、他行との提携もそれ自体はユニークなものではないだろう。ただし銀行の収益は融資や運用により生まれるものだ、という考えはどこの銀行でも共通認識だったのだろう、ATM手数料をメインとしてビジネスにできるかは銀行で働いていても生まれてこなかったんだろう。銀行が客の姿を見ていなかったとは言わない、銀行ではATMの利便性向上のニーズがある人と遭遇する機会がなかったのかと思う。

僕の仕事、開発でも外の仕事を知る事の重要さは度々説かれる。新しいものは突然ひらめいてくるものだろうか?そんなことはない。学術レベルのものはそうなのかもしれないが、実用レベルのものは大半が既存のものの組み合わせにより新しい価値を創造しているはずだ。だからこそより広い世界を知り、多くのものに触れ、いくつものバックグラウンドを持っておく事が武器になるのだと僕は思う。

日経ビジネスには感謝している。特集記事を読まなければセブン銀行の特異なビジネスモデルを認識しないままだったろう。銀行株は僕の趣味ではないのでスルーしてたけれど、セブン銀行についてはちょいと調べてみよう。