WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

競争の先にあるもの

PCやそれに付随するシステムは人の事務作業の工数を大幅に圧縮し、携帯電話はコミュニケーションのコストを削減し、インターネットは地域間による情報格差を完全にではないけれど是正した。これ以外にもさまざまなツールのお蔭で、ビジネスのサイクルは昔とは比較にならない速度で回っているし、それは今後も加速していくんだろうなという予感がある。

 今の世の中は資本主義、有体に行ってしまえば金をガンガン稼げる人が正義だ。だからこそ経営者や企業家はフューチャーされるし、人々はもっと稼げる存在になるために学習し効率を高め、また学習し…というスキルアップのスパイラルに身を投げ出す。ほどほどに働いてそこそこにお賃金を貰い、プライベート重視で生きていく…そういった思想は今だとやっていけるだろう。しかし競争が激化していく中で、いつまでその生き方でいられるだろうか。*1ビジネスで勝ち残れない企業では食べていけないし、勝ち残った企業の中でも十分なアウトプットを出せる人しか生き残れなくなっていくのではないか。僕は人生はビジネスだけだとは思わないし、稼ぐ力というのが人間として評価されるべき全てではないと思っている。しかし効率化により仕事のパイが減っていくと、一般的な価値観の中でビジネスが占める割合が大きくなっていく。

 

今は工場のライン作業や事務手続きなどの仕事のパイがロボットやシステムに食べられていっている。単純作業者じゃなければ大丈夫!アタマを使う仕事なら安心さ!という声もあるかと思うが、僕がいままで見てきた仕事で人間じゃないとできないなぁ…と思う仕事はそんなに無い。これは僕がやっている設計開発に関してもそうで、毎回新しい製品を作るとしても、大体の部分は僕の知識と経験を元に頭の中でモジュール化された形状を組み合わせていき、モジュールで対応できない場所についてはシミュレーションと試作評価で対応する、ある種のルーティンワークだ。転職を機に知識と経験の幅は増えたかもしれないけれど、モジュール化できるようなものは最終的に機械で置き換えが可能であるだろう。*2だから僕も進歩する機械に後れを取らないように、そして同じく機械と競争する同僚に負けないように、日々プライベートを削り勉強に時間とお金を費やしていかなければならない。学習と仕事の効率を最大限に上げ、時間もギリギリまで捻出してしまえば、最終的に雌雄を分かつのは才能・生まれ(既得権益)といったところになってしまうだろう。幸いにも今はそこまで限界ギリギリバトルをやっている状況ではないが。

 

競争に次ぐ競争の果てにたどり着く未来、そこでは技術が今から数段も発展して現代の労働の大半が機械によって行われていることだろう。そうなったときに労働によって生み出される富はどこへ向かうだろうか。労働に足るだけのスキルを持たない人は駆逐されてしまうのか。僕はそんな未来は嫌だ。

 

そうういった未来を回避するためには、やはり富の再分配が必要だ。それも仕組み的なものではなく人間の道徳から行われるものでなければと、僕は思う。完全な仕組みなんて作れるものではないし、何よりも道徳の元となる感情や情緒の深さこそが人間を人間たらしめるものだと思うからね。進化するのは科学技術だけではなく、人間の考え方そのものも進化させていかないと、大半の人にとってディストピアになるんじゃないかと思うんですよ。

*1:効率よく仕事してスパッと帰る人よりも効率よく長時間働いてくれる人の方が会社的には嬉しいよね。

*2:ソフトも電気も金融もコンサルもある程度決まったモジュールを組み合わせるという点では同じなんじゃないかと思っている