WICの中から

機構設計者が株式投資や育児に奮闘するblog

逆に性能が落ちる事も。スマホにケースは無駄だ

僕はスマホにケースをつけない。機能面でケースの必要性がないからだ。スマホは単品として耐衝撃・放熱・耐傷などなどの諸性能が担保されているのだ。となればあえてケースを使うモチベーションは、デザインの着せ替え程度のものだ。
もし本体保護の観点からケースを着用している人がいるなら、イチ設計者の意見を聞いていって欲しい。

ケース着用による外形と重量の増加

設計は寸法と重量との戦いである。製品企画から出される仕様はかならず過去を上回るスペックになる。世界最薄、最軽量…、モビリティ改善を目指したこれらのフレーズは確実に営業トークをサポートしてくれる。

年々厳しくなる要求を超えるために、設計者は捻り出すように0.1mmを捻出し、命を削るように0.1gを削るのだ。時には目標仕様に到達することが出来ずに、関係部署各所に土下座周りを経た後に吊るし上げをくらうこともあるだろう。それほど、仕様寸法と重量は設計者にとって重要なものだ。なんといっても、その寸法、重量がスマホとして最適だ!と練られて作られているものだからね。

ケースの着用は、外形寸法を大きくし、重量を増加させる。その点で、明らかにスペックダウンだ。

塗装・アルマイトの外観は易々と傷つかない

タッチパネルは簡単に割れない。塗装は容易く剥がれない。そのように作ってあるものだ。タッチパネルに使っているガラスは、対指紋コーティングや対傷つき性を考慮した硬度を誇っており、フィルムなしで十分に使用に耐えるように作られている。

塗装についても、摩耗、傷、耐薬品など様々な試験を経て世に出ている。塗装の役目は見た目以外に、本体を各腐食から保護することも兼ねている。塗装信頼性の実力や評価のレベルは、ケースメーカーよりも大手のスマホメーカーの方がしっかりしていることだろう。

本体より傷つきやすいケースで外観を保護することに意味はあるのだろうか。あるとすれば、外身はあまり気にせず、ただ売る時の事を見越して製品が如何を綺麗な状態に保っておきたい場合のみだ。

放熱性の低下

スマホはゲームからブラウジング、カメラなどをオールインワンで実現する。高い演算能力を有するCPUやGPUに支えられてのことだ。しかし高い演算能力は多くのエネルギーを使い、その損失は熱というエネルギーの墓場行きになる。

スマホには空冷ファンはなく、その冷却思想は「熱を全面に広げて沢山の面から放熱する」だ。最終的にケースから外気へ熱交換をしてやることが重要だ。
しかしカバーはそれを阻む。外装ケースをさらに一段階覆うことで、確実に冷却性能は落ちる。内部温度の上昇はチップ寿命に悪影響を及ぼす、チップよりも熱に弱いバッテリーにはなおさらだ。

中にはバッテリーが一定以上の温度になると寿命保護のために充電しない(充電速度を落とす)ようにする処置が施してあるものもあるので、充電が遅いと思ったらカバーをとって冷やしてみるといい。ケースの着用は設計者本来の冷却設計をダメにする。

以上、設計者から見たカバーに対する感想でした

設計に携わるものとして上記3点はやはり言っておきたかった。あとね、カバーは高い。樹脂成型品を設計する自分にとって、シンプルな樹脂ケースに値段分の価値を見出せない。

ただ、デザイン目的で買っている人がいるのは事実だ。デザインは偉大である。「iphoneが売れたのはデザインが素晴らしいから」単色のシリコンケースに入れたiphoneを手に取りながら、僕にそう説いた人がいた。デザインは自由、人の好みも自由だ。