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【書評】「プレス工法選択アイデア集」板金加工の実戦向き専門書

ハードウェア設計をやる人は射出成形から切削、そして今回の書籍にもあるプレス加工など、様々な製造法の知識を有しておく必要があります。どのように部品が作られるのかが想像出来なければ、部品の形状なんて作れませんからね。

僕はプレス品の設計が苦手です。プレスは金属の板を叩いたり曲げたり剪断したりすることで形状を作って行くものです。灰皿とかお菓子・ジュースの缶が代表的な製品ですね。板がどこまで変形出来るか、とか順送で作る際の加工ステージ順とかの想像がどうも難しく思えて…そんなわけでこの本を手に取りました。

とはいえ本著は外装や機構設計者に向けた本ではありません。ターゲットとしているのはより現場に近いところ…金型設計者と製造技術者です。ターゲットが最も専門性の高いレイヤーだけあって、本著の内容はプレス加工についての応用実戦編というべきものです。基礎知識としてプレスの金型構成や専門用語が頭に入っていないなら、ミスミの金型講座に目を通す方が先でしょう。*1

製品形状によってドラスティックに変わる金型

本著では主に難しい形状の製品に対して、実戦で何を考えてどのようなアプローチをしたかが書かれています。例に出てくる中で印象に残っているのがモーターのブラシですね。細い幅に開口があり、場合によってはそこから曲げもあったりで…。それぞれ、ステージをどのように組んでいけば歪みや異形状が出ない、綺麗な製品に仕上がるかが図付きで説明されています。

パンチとダイが逆転するなど、プレスが苦手な僕にとっては初見でよく分からない金型も多数出てきました。製品の取り出しや金型自体の強度、製造サイドがそういったことを考えて金型を複雑にしていかざるを得ないこと、それを避けるためには製品形状でどのように回避してやれば良いか、その想像が以前より尽きやすくなりました。

より、プレスの金型を想像出来るようになったと言えます。

ノウハウが詰まっている

金型を作ると数百万単位の金がかかります。工法のアイデア集は実際に作られた金型を例にとっており、お金をかけて作られた現物の学習例が満載です。毎度金型代と引き換えに得られるであろうノウハウがこの1冊に凝縮されていると考えると、なんだか有り難いものを感じます。

設計・製造はモノが実際に形を伴って生まれてくるものです。つまり最終的なアウトプットがあってのもので、電子の上のデータをくるくるしているだけでは分からないものでもあります。

プレス品に限らず、設計に関わるものを学ぶときは現物・現実を例にとったものが理想です。

*1:ミスミの講座は、それはそれで情報量が多く大変勉強になるものです。